実は現地にはない?「台湾カステラ」驚きの用途 日本ではコンビニでも販売、台湾との共通点

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観光客は台湾内外からやってきた。日本、韓国、マレーシア、インドネシア、シンガポール……。そのうちに各国から研修生がやってきて、数カ月の実習を経て、自国で開業するケースが続いた。そして源味本舗も、数カ国で海外展開を果たした。そこへコロナが襲った。

「観光客が消え、それまでよく見られていた歩きながら食べる、というスタイルはできなくなりました。外出が減り、飲食習慣が変わって、売り上げは全盛期の2割に落ち込みました」

店舗数を減らし、ドリンクなどメニューも増やしたが、以前のような売り上げには届いていない。今は原点回帰として、ケーキに絞り、店を切り盛りしている。

頼さんによると策が功を奏し、夜や週末など、少しずつ人出が戻ってきたと実感しているという。 だが、コロナ前に戻るにはもう少し時間がかかりそうだ。

「なるべく売れ残りが出ないよう、売れ行きを見ながら焼いています。以前のような状況に戻るには、あと半年はかかると見ています」

台湾と日本に共通する「懐かしさ」への回帰

取材しながら感じたのは、台湾と日本に共通して起きている「懐かしの味」への回帰である。台湾も日本も、食の西洋化、多様化が起きて久しい。

バラエティに富んだ食が競争を繰り広げる中で、どこかそれに疲れているのではないか。たとえば、日本で言うならホットケーキやナポリタンのように「もう一度あの味を食べたい」という気持ちが、台湾ではあちこちで「台湾カステラ」という形で起きた。それが海外にも飛び火し、日本仕様として生クリームなどが加えられる形でローカライズされたのだろう。

そんなことを考えながら、筆者は冒頭の廟を訪ねてみた。誰かが新美珍のケーキを置いていた。李さん姉妹の元に、合格通知が届いていているよう願うばかりだ。

田中 美帆 台湾ルポライター

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たなか みほ / Miho Tanaka

1973年愛媛県生まれ。大学卒業後、出版社で編集者として勤務。2013年に退職して台湾に語学留学へ。1年で帰国する予定が、翌年うっかり台湾人と国際結婚。上阪徹のブックライター塾3期修了。2017年からYahoo!ニュース個人オーサー。雑誌『& Premium』でコラム「台湾ブックナビ」を連載。2021年台湾師範大学台湾史研究所(修士課程)修了。

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