実は現地にはない?「台湾カステラ」驚きの用途 日本ではコンビニでも販売、台湾との共通点

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台湾カステラの取材で、まさか今をときめく半導体最大手の名前が出てくるとは思いもよらぬことだった。

考えてみれば、廟があるとはいえ、決して人口の多くない場所で経営が続く理由に、大いに納得させられた。サイエンスパークには、多くの企業が集う。しかも会議用の受注は、一度に1000〜3000個と桁違いだ。

黃さんが家業を継いで20年が過ぎた。台北に支店をオープンさせたのはごく最近のことだ。

「お客さんから、台北に支店を作ってほしいと言われたんです。台北に焼くスペースはないので、新竹で焼いて、その日の焼き立てを運搬車で毎日、運んでいます」

黃さんの作る「プリンケーキ」も、名前にこそプリンと付くものの、昔ながらの素材で焼き立てを届ける、三拍子揃った「台湾カステラ」といえる。

グローバル展開するもコロナで打撃

新美珍が老舗なら、新規参入で一気に広まったのが、台北郊外の観光地、淡水に本店がある源味本舗だ。現在淡水と、観光地としても人気を誇る士林夜市の中に店を構える。

源味本舗が店を構える淡水(写真:筆者撮影)

士林店の店長、頼冠霖さんによると、「固定のお客様としては、年配の方が多めです。年齢の高い方はプレーンを選ばれることが多いですね。若い人にはチーズ味など、少し重めの味が好まれるようです」。

同店で扱う味は全部で8種類だが、普段はプレーンとチーズのみ。その他の味は、注文に応じて焼くのだという。

「日本のお客様はプレーンを頼む方が多く、韓国の方は不思議とチーズ味を注文されますね。欧米の方はさらに濃い味が好みのようです」

同店は「焼き立てケーキ」(中国語で現烤蛋糕)を看板メニューにして淡水で2011年に開業した。菓子業界は未経験だった2人の創業者が、懐かしい味を残したいと起業した。

実は淡水での開業以前にも、台北の隣の新北市で店を開いたものの、味は1種類ですぐに飽きられてしまった。そこで改めて店の出店先から検討し直した。そして、ひっきりなしに観光客のやってくる淡水でリスタートを切った形だ。

この戦略が当たった。人通りの多い道で、焼き立ての香りが集客力を発揮。その後、オーブンから取り出したばかりのケーキを切る様子が注目され、店のパフォーマンスとして定着した。

頼さんが入社したのも、ちょうど台湾メディアが取り上げて話題になった頃だった。

「本店の向こう側には、淡水河が流れています。目の前に広がる景色を眺めながらちょっと休憩、そんなときに焼き立てのケーキを家族でほおばる姿がよく見られました」

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