「非正規は仕事をしない」公務員の分断を生む根因 「公務員制度の歪み」が両者の理解を妨げている

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正職員になりたくても、年齢制限がネックになる場合もある。東北地方のある自治体で公立図書館の司書を務める男性(40代)は、民間企業で10年以上勤務した後、3年前から公立図書館で会計年度任用職員として働き始めた。

しかし昨年3月、前職の図書館を雇い止めされ、その後勤め始めた別の自治体の図書館でも今年、再び雇い止めを通告された。それでも、小学生から高齢者までさまざまな人と関われる仕事にやりがいを感じ、新たな司書の求人を探している。

給与は手取り12万円弱。単身で実家住まいなので生活は何とか成り立っているが、貯蓄に回す余裕はない。「親亡き後や自分の老後を考えると、正職員になりたい」と希望する。

「何よりも雇用を安定させたいので、正職員の求人があれば遠隔地でも応募するつもりです。ただ司書は正職員の募集自体が非常に少ないし、40歳を超えると採用はかなり厳しいと実感しています」

人事評価の根拠が不明確でも泣き寝入り

また男性は、雇い止めされた職場での人事評価がわからないことにも「モヤモヤ」を抱えているという。いずれも仕事中、特に厳しく注意を受けるようなことはなかったが「能力が足りない」と説明された。最初の雇い止めの際、組合を通じて人事評価の開示を求めたが、守秘義務を理由に拒否された。

「入職したてで不慣れなため未熟な部分もあったと思いますが、評価がわからないままでは、自分に何が足りなかったのか、どこを改めるべきなのかも知りようがありません」

ASU-NETの川西氏も「『人事評価』『公募の結果』は闇の中で、行政の側にこれらを主張されると、たとえ上司の好き嫌いや、労働組合と関わっていることへの反感など恣意的な判断があったとしても、立証するのは至難の業です」と嘆く。

非正規も含め、地方公務員は不当な処遇を受けた場合、各自治体の人事委員会・公平委員会に審査などを請求できる。しかし、生活を維持するため職探しに追われて、申し立ての余裕がない人、申し立ての制度そのものを知らない人も少なくない。

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