「非正規は仕事をしない」公務員の分断を生む根因 「公務員制度の歪み」が両者の理解を妨げている

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民間企業では今、非正規の待遇改善の動きが広がりつつある。小売業のイオンリテールは、パート従業員に売り場責任者など裁量の大きな仕事を任せるとともに、一定の条件を満たした人については、賃金や手当てを正社員同等に引き上げる取り組みを始めた。

川西氏によると、公務員は従来「試験にパスした」ことにプライドを持ち、非正規の登用に消極的だったという。しかし自治体で非正規の離職が相次ぎ、欠員のため市民に行政サービスを提供できなくなるケースも現れている。

このため「能力が実証された非正規職員は正規に登用する、1年、3年といった有期雇用から無期雇用への転換ルールをつくるなど、対策の必要性も次第に認識されるようになってきました」。

ただ非正規の労働環境改善には、正職員との協働が不可欠だとも指摘する。

「非正規のみ所属する組合の運動だけで、事態を動かすのは難しい。正職員に非正規の労働実態とそれに合わない処遇を伝えて『それはひどい、改善すべきだ』という共感を広げ、連携した取り組みでともに改善を訴えることでこそ、実現に向かいます」

誰もが「非正規はいらない」と思っている

相談機関を3月に退職した鈴木さんには高校卒業後、正職員として市役所に勤務した経験がある。

「私も正職員として働き続けていたら、公務員の常識が社会とずれていることに気付かなかったかもしれない。正規と非正規が不満をぶつけあう不毛な関係を終わらせて、ともに制度そのもののおかしさに目を向けて欲しい」と訴えた。

冒頭で紹介した投稿者も、以下のような趣旨の要求をしていた。

〈非正規はいらない。正職員を増やしてほしい〉

非正規、正規という「身分」の解消。結局のところ、誰もがそれを望んでいる。

有馬 知子 フリージャーナリスト

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ありま ともこ / Tomoko Arima

共同通信社を経て2018年独立。取材テーマはひきこもり、児童虐待、性暴力被害や多様な働き方など。

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