ロマン溢れる「海底遺跡」知られざる研究の世界 転換期を迎えている「水中考古学」の最前線

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水中考古学はまだ比較的ニッチな学問だが、水中考古学を含め考古学分野自体は規模が成長しているところだとベンジャミンさんは話す。文化遺産の管理に対して関心が高まっていることも1つの要因だが、環境コンサルティングやインフラ開発でも考古学的調査が必須となるため、専門知識を持った人が求められる。

水中で行うものだと、水中の空間計画、水中の情報通信網の整備、石油やガスのパイプラインの建設、港やマリーナの建設、洋上風力発電所の設置が活発化しているのだ。

海外でも水中考古学で学位が取れる大学は比較的珍しい。学位が取れる教育課程を提供しているのは、大物教授がかつて着任した先の大学や、エジプトやイスラエルなど海中の遺跡が見つかっている国の大学院であることが多い。

フリンダース大学のプログラムの中では、水中考古学の歴史や調査方法について学んでいくが、オプションでサイエンスダイバーの資格を取ることもできる。サイエンスダイバーとは、学術調査を行うためにダイビングを行う人のこと。

水中でコミュニケーションを取る方法や、遺跡の3D画像化に使う撮影機器の使い方、遺物から堆積した泥を吸い取る巨大なホースのような機械の使い方なども学んでいく。ちなみに調査のために海へ潜るサイエンスダイビングは娯楽のダイビングと違って、必ずしも美しい海で泳げるとは限らない。視界が悪かったり、ヘンなごみが流れたりするような場所でも、調査すべきものがあるから潜るのだ。

水中に潜らない水中考古学者もいる

ダイビングの講義と実習は水中考古学のプログラムがある多くの大学で提供され、フリンダース大学も、大半の学生がサイエンスダイバーの資格を取る。資格の条件は国によって異なり、運転免許のように各国で通用する切り替えの制度が整っていないのが現状だ。

水中考古学者というとダイビングをしているイメージがあるが、実は全く水中に潜らない水中考古学者もいる。

「海中に潜って遺産を見つけるのも水中考古学の醍醐味の1つですが、水中考古学の専門性が必要とされるのはそうした場面だけではありません。デスクワークで、長い月日をかけて制度づくりをしたり、コンプライアンスの報告書を書いたりすることも必要です。遺跡の調査に出向く時でも、ずっとボートの上で分析をしたりしていて一度も潜ったことのない人もいます」とベンジャミンさんは言う。

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