ロマン溢れる「海底遺跡」知られざる研究の世界 転換期を迎えている「水中考古学」の最前線

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海底遺跡(写真:MIZUTANI / PIXTAピクスタ)
世界は風変わりな学びにあふれています。当事者にとっては生活の当たり前の一部なのに、地域性があまりに強いが故に、外からしてみたらちょっとヘンなものがたくさんあるのです。サイエンスライターの五十嵐杏南氏の新著『世界のヘンな研究』を一部抜粋・再構成し、水中考古学の世界を紹介します。

車がなかったその昔。人類が乗り物で事故に遭うといえば、船の難破だ。「人類は農作物の作り方より前に、船の作り方や航海するすべを知っていた」と言われるだけあって、世界中の海底には少なく見積もっても300万隻の沈没船がゴロゴロ眠っているとされている。

こうした沈没船をはじめ水中遺跡の調査を行うのが、水中考古学だ。歴代の発見の一例では、水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス博士が、ツタンカーメンのもとへ向かっていたと思われる沈没船から金銀宝石類を見つけ、紀元前14世紀頃の貿易の様子を明らかにした。

日本でも元寇の際の船が発見

またイギリスでは、1545年に沈没したイギリス艦隊の軍艦メアリー・ローズ号が見つかり、当時軍艦に使われていた大砲や火砲や弓矢といった武器に加え、人骨も回収され、チューダー王朝時代の生活を理解する手がかりとなった。

そして日本では、長崎の海底で元寇の際の船が発見され、いかりや船に向かって伸びるロープの配置を分析することで元軍の撃退につながった神風の進路が推定できた。

沈没船の他にも、水中考古学にはギリシャ神話に出てくる古代エジプトの都市ヘラクレイオン(別名トロニス)や、イスラエルの古代の村のアトリットヤムをはじめ、海に沈んだ都市の発掘や、第1次・第2次世界大戦で沈んだ戦闘機の調査が含まれる。

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