比較すると少なく見えるかもしれないが、私立小は受験者数を明かしていない学校も多くそれが含まれないうえに、1都4県の私立中は約300校に対して私立小は約100校(文科省データより)。私立小の受験者数が延べであることを考慮に入れても、受験者数が多いことが見えてくる。
「私立や国立の小学校は、都心部に集中して存在しているので多くの人には関係ないことのように見えるかもしれませんが、今や東京都心部では就学年齢の5人に1人が受験すると言われているほどに増えています。また、中学受験と同じように都心部の教育熱が近隣地域にも広がり、埼玉などの私立小学校の応募者も増えています」
小学校受験の情報サイト「お受験じょうほう」を運営するバレクセルの野倉 学氏は、現状についてそう語る。
教育費増と公立不信が私立志向に影響か
私立や国立小への注目度が高まっている理由には、中学受験の過熱も大きく影響しているようだ。一般的に3年前から準備すると言われてきた中学受験。だいたい小学校3年生の3学期に始まる新4年生コースに加わることで受験勉強の始まりとなることが通例だった。
しかし、今や人気塾ではその段階では入塾を断るほどの満席だったり、ハードルの高い入塾試験で落ちて入れなかったりということも出始め、勉強習慣をつけるためにも少しでも早く入塾させる傾向が出てきている。家庭によっては小学校入学と同時に塾に入れるというのも、もう珍しくはないのだ。
こうした受験への過熱の背景には、共働きの増加で経済的に私立に通わせることのできる家庭が増えたこと、少子化で子どもにかける教育費が増加したこと、などがあるが、さらに公立校への不信も私立志向を増長させていると野倉氏は言う。
「これまで私立小学校というと大学附属校や女子校を中心とした有名校を狙うブランド志向が強い傾向にありましたが、今は学校名よりも学校の教育内容や個性、特色で私立を選ぶ親が増えています。
3年以上習い事やスポーツを一切やめて取り組むほどに過熱している中学受験をさせるよりも、まだ偏差値などで図られない小学校受験のうちに一緒に取り組んでおきたいということもあるようです」
さらにコロナ禍でオンライン授業対応に出遅れた公立小学校に対して、私立は比較的早くにタブレット購入やオンライン授業提供などに柔軟に移行したことも、親たちは見逃していなかったようだ。緊急時の危機管理、各学校で判断し実行に移すことのできるリーダーシップと経済力、そういった時に軸となる確固たる学校方針……。
パンデミック禍の教育は、「どうせ学ぶことは同じだろう」と思っていた人々に私立と公立の大きな差を露呈してしまったのかもしれない。
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