「AIIBの傍観者」になったのは、米国の失態だ クローニン氏、オバマ政権の問題点を斬る

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──現状のソウルとの困難な関係を背景とした場合、連邦議会での演説に安倍首相を招くことの「メリット」と「デメリット」をどう考えるか。

米国にとって日本は、地域における最も重要な同盟国だ。日本なくしては、現在、地域内で米国が維持しているような形での米軍駐留はなし得なかった。日本は民主主義国家であり、世界第3位の経済大国だ。過去70年間の日本がそうであったように、安倍首相は平和に対する貢献を行うことに熱心に取り組んでいる。

その姿勢は、第二次世界大戦前の日本のそれとは全く異なるものであり、そこを見誤ってはならない。連邦議会での演説のために首相を招待するのは、非常にいいタイミングだ。

──タイミングは本当にベストだろうか。日米防衛協力のための指針の見直しの最中に演説を行うのはベストなタイミングといえないのでは?

たしかに、首相が連邦議会で演説を行うのに理想的なタイミングは来年だったかもしれない。現在、ホワイトハウスはTPPについて連邦議会に圧力をかけている最中というタイミングだ。このタイミングにおいては、首相に対してはさまざまな類の注目が集まる可能性がある。

来年まで引っ張らなくても、5月と8月の戦勝記念日の後とするオプションもありえただろう。今回の訪問では議会演説をせず、安倍首相が在任中にもう一度、ワシントンを訪問する際に演説するよう、その手配を約束する、という方法のほうがよかったかもしれない。

敗戦70年の談話では何を話すべきか

──首相はどのように歴史問題を解決しようとしているのか。

これは本人以外には、誰も確かなことは言えない。ただ、この問題に関して首相に助言を行う懇談会の座長を務める北岡伸一教授は歴史の問題の取り扱いの難しさを熟知している。

最近、私が日本を訪れた際、北岡教授は私の提案する3つの論点について同意した。第一点は、首相は、深い尊敬と反省の念をもって、過去を償うという点を明確にすべきということ。長々としたスピーチや談話である必要はないが、首相が真摯かつ信頼できる姿勢を示すことが重要だ。第二点は、過去70年間にわたって日本が国際的な枠組みの中の秩序と安定性構築のために行ってきた貢献についての、静かでありながらも大いなる誇りについてアピールするべきだ。そして3番目に、ポジティブで、ルールに基づいた将来展望を世界に対して示すことだ。

これら3点こそが私が重要だと考えるポイントだ。北岡先生はこれを理解しており、首相にそう助言するだろう。また、首相もこうしたポイントをよく理解しているように思う。とはいえ政治的な計算がどのように働き、発言内容に影響を与えうるかについては、首相の演説が行われるその瞬間まで誰にも知り得ないことだ。

──表現のニュアンスが重要になってくる。村山談話と小泉談話で使われたものと全く同一の表現を使うべきだろうか。

誠実さを伝える上で、手段がたったひとつしかないようには考えていない。しかし、歴代首相の談話で使われた表現を含めることは、継続性を示し、新たな懸念を避ける上で最も明確な方法だ。

逆に、これまでの談話から後退すれば日本にとって何らのプラスにならず、多数の問題を引き起こす可能性がある。今は、日本が過去70年を通じて行ってきた貢献に対して称賛を受けるべき時だ。にもかかわらず、批判を巻き起こすことになるのは明白だ。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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