日本人はショックを受けたはずだ。7月30日、米下院議員140人(共和党議員107人、民主党議員33人)は「高い基準で市場を開放する気がないとわかれば、日本、カナダ、その他どの国でも除外してTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を進めることを強く要請する」との書簡をオバマ大統領に送った。
その中で、日本が農業部門の「聖域5品目」への関税や輸入障壁を撤廃することを拒否していると指摘されていた。
民主党は通商のタカ派で、共和党は自由貿易主義者だ、と日本人は見がちだ。また、「共和党は民主党より親日的」との単純な見方が多い。が、4月のオバマ大統領訪日以来、共和党議員はTPPに関しては強硬姿勢になった。大統領はその際、(コメが例外となり)農業の輸入障壁が完全撤廃されなくても受け入れる意向を示した、とみられている。
日本寄りの共和党議員が「日本外し」
この強硬姿勢の出どころが、日本寄りでTPP支持の共和党議員であることが重要だ。彼らは、議会が承認できない内容で大統領が合意してしまうのをおそれており、議会批准を確保するために日本政府がしなければならないことを明らかにしようとしている。
書簡に署名した議員を取りまとめたのは、米下院通商小委員会のデビン・ニューネス委員長(共和党・カリフォルニア州選出)だ。同氏は今年1月、良好な日米関係を推進するため、ホアキン・カストロ議員とともに「ジャパンコーカス」を設立した。共和党議員は農業問題に敏感だ。下院の約60議席が農業主体の選挙区から選出されており、その大半を共和党が占めているからだ。
通常、どんなFTA(自由貿易協定)であれ、自由貿易推進派の一角を占める農業ロビーの支持なしに下院を通過するのは極めて困難だ。この書簡を先頭に立って推進した全米豚肉生産者協議会は、ほかの農業部門よりも日本に強硬姿勢を取ってきた。同協議会は、日本が「差額関税制度」など豚肉に関するすべての関税と輸入障壁を撤廃しないかぎり、TPPを支持しない、と脅している。
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