「非正規のほうがマシ」発達障害の47歳が抱く絶望 企業側とのミスマッチで生まれる「不協和音」

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これらの会社の対応に疑問を感じ、労働局にも相談したが「障害者関連法と労働法は管轄が違うので、パワハラと障害者差別などは同一の案件として扱うことができない」とされた。休職中の今は、うつ症状が悪化しないよう療養しながら、デザイン関連の学習をし直して再度転職を考えている。

総合人材サービスのパーソルグループの特例子会社で障害者雇用支援事業を手掛けるパーソルチャレンジの大濱徹ゼネラルマネジャーによると、琴子さんのように、発達障害者の中には、学歴や語学力、技能を身につけても定着できなかったり、新入社員の時点で会社の風土に合わずにつまずいたりする場合があるという。

「ミスマッチによってうつ病を発症するなど2次障害を引き起こしてしまい、一家離散にまでつながってしまった例もあります。雇用する企業側で、障害者雇用に取り組む意義や、障害に対する社内理解などが十分でないことが一因として考えられます。求人票を見れば、障害者雇用に本気で取り組んでいるか、障害に理解のある企業かどうかは一目瞭然です」

「変われない企業は淘汰される」

一方、LINEには実際に障害者と一緒に働く現場から苦悩の声も寄せられた。

「障害者雇用をするなとは言いませんが、雇う側に対しても教育すべきだと思います。ケアや接し方への教育も何もないままに制度だけが強要されて、辞める時には一方的にこちらが悪者にされる始末です」(食品工場の管理職)

「50代の人事課長は見下しています。『障害者はみんな同じ』という感覚を見直さなければ、一緒に働くことは難しいです」(レジ打ち・品出しなどショッピングセンター勤務)

パーソルチャレンジの大濱氏は「発達障害には、あいまいな指示がわからない、特定の物事にこだわりが強い、集中力が高い、などの特性があります。その特性を活かすよう、仕事内容や働き方を多様化することが大切です。固定化された制度や働き方を前提に設計された旧来の日本の会社制度のままでは、ミスマッチや退職が発生するのは当然。企業側の変化が求められています」と指摘する。

「企業は、障害者も企業活動に貢献する人材として戦力化を図る企業と、そうでない企業に二極化しています。違いは、経営者が社会の変化にアンテナを張っているかどうか。多様な人材を生かそうとしない会社は、いずれ淘汰されるのではないでしょうか」

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