中国で苦戦する日本企業にありがちな過ち

「真の課題」が存在しているのはどこだ?

「よし、では卸を巻き込んだサプライチェーン改革にまずはメスを入れよう。次は、カネのガバナンスだ」

言いながら沢木は、「物流」と「財務」のハコを、力強くマーカーでぐるぐると囲んだ。

その後3時間、再び議論を交わし、中国事業を再成長軌道に乗せるために何にどんな順番で取り組んでいくか、変革ステップを固めた。

最後の8番目に、「経営の現地化」を織り込んでいるのも沢木のポイントである。国には出していないが、この取り組みを通じて、2年後までに張を自分の後任候補にする、という強い覚悟があった。

沢木は課題と実行計画が整理されたホワイトボードの前に立って満足そうな表情を浮かべた。

「よし、まずは流通改革だな。来週から忙しくなるぞ。ではみなさん、その前にエネルギー補給といきましょうか」

1時間後、杭州の老舗レストラン「張生記」で名物料理の“東坡肉”(醤油と砂糖で味づけされた豚の角煮)に舌鼓を打つ沢木たちの姿があった。

(写真:三浦 太一 / Imasia)

――“戦場”に放り込まれた以上は、必ず“戦果”を上げて帰らなければならない。活路は、前だ。

沢木はよく冷えた青島ビールを喉に流し込みながら、静かに決意を固めていた。(次回に続く)

物流やキャッシュが成長のボトルネックに

議論の中で、沢木たちは大変いいポイントに気づいた。物流(運び)やキャッシュが成長のボトルネックになっているケースは、新興国、特に中国ではよくある話だ。

日本と比べて代理商と呼ばれる卸の経営レベルが低く、また領収書の偽造なども簡単にできる国でもある。“穴の開いたバケツ”を修理しなくては、いくらよい商品を開発して営業マンを強化しても、意味がないことは明白だ。

また、カネだけではなく、モノ・ヒトも含めたバックオフィス(経営基盤)の再構築に取り組もうとしていることも評価できる。

① 標準化・効率化・集約化を進め再成長局面での業務ボリュームの増加に手を打ちつつ、 リスク管理・ガバナンスを強化し、 事業が求めるリソースを適時に供給できる仕組みを整える。

この3つに(先んじて)取り組んでこそ、ダンスが止まった後、継続的な収益の成長を実現できる礎が築かれる。

さらに、最終的な「経営の現地化」を改革アジェンダに組み込むことも重要なポイント。ローカルマーケットで永続的に勝っていくには、ローカル人材に経営を任せる状況にもっていくことが必要だ。口で言うのは簡単だが、ローカル人材が成長できる仕事を与える権限委譲できる仕組みを作るなど、意識的に取り組まないと達成できないアジェンダでもある。

次回以降は、「ダンス」を止めようと中国市場で奮闘する沢木たちの活躍をストーリー仕立てで追いながら、中国での再成長基盤の構築を模索する多くの日本企業への実践的な処方箋を提示していくことにしよう。(第3話へ続く) 

(使用イラスト:apichart / Imasia)

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