直後にG7首脳全員がマドリードに移動してNATO首脳会合に参加する、G7と連動した日程が組まれた。マドリードに飛んだ岸田文雄首相は、日本の総理大臣として初めてNATO首脳会合に参加し、ウクライナ情勢やインド太平洋地域の安全保障におけるNATOとの協力を話し合った。
先立つ3月のブリュッセルG7首脳会合でもウクライナ支援が話し合われたが、この会合はNATO首脳会合と欧州理事会(EUサミット)と同時に開かれ、岸田首相も含むG7首脳はストルテンベルグNATO事務総長とも意見を交換した。結果、NATOの新戦略コンセプトはロシアを最大の脅威と定義し、初めて中国にも言及した。
G7はウクライナ侵攻を機にNATOとの連携を強化し、これにより安全保障面でG7以外の同盟国とのコンセンサス形成を強化した。岸田首相が発した「今日のウクライナは明日の東アジア」との警鐘もG7とNATO諸国の共通認識となった。ロシアの参加によって揺らいだG7が、ロシア排除を経てリバイバルを果たしつつある。
「法の支配」を訴えグローバルサウスを巻き込むG7
対ロ制裁の実効性を高めつつウクライナ支援を強化するためには、NATOとの連携強化に加え、グローバルサウスの巻き込みも不可欠である。2023年2月24日、岸田首相はオンラインでG7首脳会合を主催し、ゼレンスキー大統領も招いてウクライナ支援を話し合った。直後のG7首脳声明は、①対ロ制裁、②ウクライナや周辺国への支援、③ロシアによる核の威嚇への対応、④グローバルサウスへの関与・支援、特にG20議長国のインドとの連携をうたった。
注意したいのは、必ずしも「G20=グローバルサウス」とは言えないことだ。侵攻から1年が経とうとする2月23日、国連総会はウクライナからのロシア軍撤退などを求める非難決議を賛成141カ国、反対7カ国で採択した。
インドは中国や南アフリカなどG20諸国と共に棄権してメディアの注目を集めたが、例えば棄権32カ国に含まれるASEAN諸国(10カ国)はブルネイ、ラオス、ベトナムだけであり、過半数が法に基づく国際秩序を支持している。アメリカを代表するシンクタンクCFR(外交問題評議会)はエルマウ・サミット直前の記事で、G7とNATOは民主主義対権威主義の構図を煽るよりも、国連憲章の遵守を訴える方がグローバルな共鳴が得られると勧める。
日本はG7における安全保障面の発言力を増しており、冷戦終結以来、中・東欧諸国をはじめ途上国への援助にも一貫して取り組んできた。2023年3月15日、防衛装備品の見本市DSEI JAPAN(幕張)を訪問したウクライナのハブリロフ国防次官はWBSのインタビューに答え、日本の実績が多い不発弾や地雷の除去に期待すると述べた。中露以外のG20諸国に加え、G20以外のグローバルサウスにも寄り添う、地に足の付いた支援策を広島サミットで打ち出すことが期待される。
(鈴木均/地経学研究所主任客員研究員)
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