第2回:7歳の少年が離婚前の両親と過ごした楽しい時間(3月28日配信)
第3回:7歳彼が離婚後2人とも再婚の両親を見て悟った事(3月29日配信)
第4回:7歳の彼が過去に戻り離婚前の両親に言いたい事(3月30日配信)
「泣いてない、泣いてないよ」
だが、いつまで経っても、桐山少年は手に持っているフォークをケーキに刺すことができないでいた。
「あれ?」
「どうしたの?」
葵が桐山少年の顔を覗き込む。桐山少年の手は動かないまま、柱時計の鐘の音が店内に鳴り響く。
ボーン
健二が桐山少年の顔を覗き込む。
「ユウキ? どうしてお前泣いてるんだ?」
「え?」
桐山少年は慌ててフォークを置いて、自分の涙袋辺りを触ってみた。
「え?」
確かに湿っている。いや、湿っている程度の涙ではない。あふれている。
「泣いてない、泣いてないよ」
桐山少年は必死にあふれてくる涙を拭うが、止めることはできない。
葵は、
「何がそんなに悲しいのよ」
と、桐山少年の涙を指で拭いながら自分も泣いていた。健二は困惑した表情で切り分けられたケージをじっと見つめていた。
「わああああああああああああああ……」
桐山少年は店内に響き渡るような声で泣きつづけた。去年のクリスマスで泣いた時よりも、大きな声で。
キッチンの奥からは、ミキが歌う「ジングルベル」が聞こえる。
桐山少年は、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と繰り返しながら、コーヒーを飲みほした。
★
「どいてくれる?」
桐山少年はトイレから戻って来た白いワンピースの女の声で気が付いた。席を入れ替わっても桐山少年は、
「また、泣いちゃった」
そう言って泣きつづけた。
そんな桐山少年を二美子が優しく抱きしめた。
「いいのよ。君ががんばる必要なんてないんだから。お父さんとお母さんが別れることになって辛かったんだもん。泣いていいのよ」
桐山少年の泣く声はさらに大きくなった。
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