居心地は悪くないのに仕事で「もやもや」の正体 晴れない気持ちをスッキリさせるのは「越境」だ

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居心地は悪くない。滋味あふれる人肌の温泉のようです。ずっと入っていられる。気持ちいい。危険はない。定年までもつかな……?

一方、この居場所に居続けていいのか? という疑問が頭をもたげてきます。居場所を変える必要がある? ここから出れば新しい世界が待っている? 今までにない自分に出会える? そんな柔らかな誘惑は、多かれ少なかれ万人にある気がします。

半ば強制的に促される“越境”

自分の居場所が変わる場面があります。子どもの頃の習い事、小学・中学・高校・大学等への進学、その中での部活動や生徒会・委員会活動、ゼミ・クラブ等への参加、就活等の機会です。明らかに居場所が変化します。「越境」です。A地点から境界を越え、B地点に立脚点が変わるのです。この越境行動により、人は新しい世界・次の世界に入っていきます。

このときの越境は、学校教育という社会システムにのっとって、半ば強制的に促されます。6・3・3・4年制を基軸にすると、6歳からおおむね16年間にわたって何回かの越境をしていることになります。クラス替えや委員会・係の変更が行われることを考えると、ほぼ毎年何らかの越境をしているともいえます。

そこでは自分の意思が明確には反映されず、他律的・自動的・半強制的に越境します。われわれは定期的にくる越境の機会を捉え、自分の可能性を信頼し、未来に希望を託し、越境していたのではないでしょうか?

そのときには、自分の居場所や次の世界に対する「もやもや」はあまりなかったという人も多いことでしょう。そもそも、「もやもや」している時間的余裕もなかったのではないかと思います。

社会人はどうでしょうか? 自我が確立するこの16年間のジェットコースターのような越境の連続と比べると、企業に参加して仕事をし始めると、居場所がかなり固定的になります。与えられた業務に習熟し、組織のルールや規範、作法を覚えなければなりません。しかしそれは、頑張れば頑張るほど、現在の居場所の常識に囚われていくことでもあります。

そして、会社や仕事に慣れていくにしたがって、どんどん居場所が心地よくなっていきます。タコ壺に入り、容易に出られなくなります。しかも、学生時代と異なり、他律的・自動的・半強制的にタコ壺から出る機会はほぼありません。居場所から出るには、自律的・能動的・自発的に行動しないといけません。強い意志が求められます。

ビジネス・パーソンの「もやもや」の正体は、このタコ壺で安住している自分と、このままではまずいという危機感を持つ自分との相克です。自ら動かないと「もやもや」は晴らせないが、色々あって動けない。忙しく仕事をしている人のリアルな姿でしょう。

このキャリアを巡る「もやもや」を晴らす鍵を握るのは、居場所を移す行為である越境です。それは、学生時代のように何かしら外部から促されることがありません。では一体どうしたらいいのか? もう少し越境について掘り下げていきます。

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