中国・習政権が袋小路に入りつつあるという懸念 「強国復権」目指すもネオ・チャイナリスクが台頭

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2022年秋の第20回共産党大会で習総書記は演説において、107回も「堅持」を繰り返して強調した。これは2番目に多く言及された言葉だが、「社会主義路線」と「共産党指導体制」の堅持を意味する。一方、同演説で頻出した語句のトップ20に「改革・開放」はランクインしなかった。習政権が改革・開放から方針転換しつつあるとのメッセージだ。

実際に習政権は経済の自由化に終止符を打ち、アリババなどの大型民営企業に対する締め付けを強化した。同時に、国有企業を重視する姿勢を鮮明にした。2016年、習主席は国有企業改革座談会で国有企業をより大きくより強くしようと指示し、その後の演説でも、繰り返し国有企業をより大きくより強く、と強調している。だが政府・共産党は国有企業を吸収・合併(M&A)で大きくすることができるだろうが、強くすることはできない。

習政権が目指す無謀な「強国復権」の夢

結果的に、順調に成長していた中国経済は習政権が目指す「中国の夢(=強国復権)」によって大きく減速し、中国社会も混乱に陥った。さらに、コロナ禍に対する「ゼロコロナ政策」が経済低迷に拍車をかけた。

こうしたなかで習主席は自らの権力基盤を固めるために、思想的に毛沢東、鄧小平と肩を並べる必要があると考えているようだ。共産党中枢において、毛沢東は政権を樹立して、人民を解放した。鄧小平のおかげで人民は豊かになった。習近平の歴史的使命は中華民族を復興させ、「強国復権」を実現することだ、というナラティブが語られている。

習政権はどのようにして中国を強くしようとしているのだろうか。それはこれまでのところ、国家が重点分野を計画的に定めて、すべての資源をこれらの重点分野に集中させる毛時代の計画経済の再演である。しかし実際には、国家による資源配分は効率化しない。反面、「強国復権」の追求は世界最大の覇権国家のアメリカを刺激し、米中は激しく対立するようになった。

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