中国・習政権が袋小路に入りつつあるという懸念 「強国復権」目指すもネオ・チャイナリスクが台頭

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中国 習近平
(写真:Qilai-Shen/Bloomberg)

習政権の誤算は政治、社会と経済を毛時代に逆戻りさせながら、「強国復権」を実現しようとする矛盾である。習政権は明らかに長期政権を目指している。もともと中国の憲法では、国家主席の任期が2期10年までと定められていたが、習政権は憲法を改正し、制度的に続投ができるようになった。

その正当性を担保するためには、何らかの功績を挙げなければいけない。だが現実には統治能力の不足を露呈し、政治、社会と経済が大きく混乱してしまっている。中国国内で習政権への不満が強くなるにつれ、結果的に言論統制など社会に対する統制を強化するしかない状況となった。

そして、ここで問われる根本的な課題は、社会が厳しく統制された状態で国家が強くなれるかどうかである。習政権の政策決定は完全なトップダウンのやり方になっている。現場からのボトムアップがまったくないという点について毛時代とまったく同じである。他方で毛時代に比べ、習政権にとって便利な統制ツールができたのは重要なことである。それはインターネットを検閲するAI(人工知能)システムと津々浦々に設置されている監視カメラによる顔認証である。

習政権は権力基盤を固めているようにみえるが、内実はほんとうに強くなっているのだろうか。胡錦濤政権(2003~12年)までの30余年間の改革・開放の蓄えを食いつぶしつつある現状で習政権の下で中国の国力がむしろ弱くなっているのではないか。アリババやテンセントなど中国のビッグテック企業のほとんどは1990年代(江沢民時代)に創業されたものであるが、今は成長しなくなっただけでなく、新たなリーディングカンパニーも生まれていない。

「戦狼外交」とネオ・チャイナリスク

習政権は国内において統制を強化する一方で、対外的には好戦的になり、いわゆる「戦狼外交」を展開している。本来ならば、外交は合従連衡のゲームにおいて仲間を増やす仕事のはずだが、習政権になってから仲間が激減し、中国の経済発展に協力してきた民主主義の国々と対立している。

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