「本田翼の演技は下手ではない」と言える真の評価 普通なのに埋没しない、稀有な魅力を持つ女優
本田翼がすこぶる良い。
ドラマ『6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系、土曜23時30分〜)での話である。昨年暮れの『君の花になる』(TBS系)で、本田翼の演技に関するネガティブな話題がSNSで盛り上がっていたことが嘘のようだ。あれはいったいなんだったのか。本田翼がこの3カ月間でぐっと成長したのか。
そこで、本田翼の真価と、俳優に求められる演技力とは何かについて考えてみたい。
“幽霊の父”に気に入られる女子
『6秒間の軌跡』はちょっとファンタジックでハートウォーミングな家族の物語だ。土曜の夜、30分間という短さでさらりと見ることができる。
主人公・望月星太郎(高橋一生)は地方都市で代々続く煙火店(花火店)の跡取りで、父・望月航(橋爪功)が亡くなった後、1人で店を切り盛りしないとならなくなった。そこへ父が幽霊になって現れる。
些細なことで、いちいちぶつかり合う1人息子と幽霊の父の奇妙な生活に加わる人物・水森ひかりを、本田翼が演じている。
花火師に弟子入りしたいと志願して働くことになるひかりは、物怖じせず何かとずけずけと物申して星太郎を苛立たせる。が、航が彼女を気に入っていて、星太郎はおもしろくない。奇妙な父子暮らしのバランスはひかりが加わったことで変化していく。
あるときひかりが航は幽霊ではないのではないかと言い出して……。
幽霊と子どもの関係に、井上ひさしの名作『父と暮せば』のような、戦争で生き残った娘が父と会話する話であろうかと予想して見ていると、今作の優秀な脚本家・橋部敦子はその予想を見事にかわしてきた。
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