「本田翼の演技は下手ではない」と言える真の評価 普通なのに埋没しない、稀有な魅力を持つ女優
本田翼はモデル活動を経て、俳優活動を始めた。最近はYouTubeでのゲーム実況でも人気で、ゲーム番組のMCも担当している。この原稿を書く前にネット検索したら、インスタで自宅公開した記事ばかり出てきた。
モデル経験があるからか、『6秒間の軌跡』の本田は作業着の着こなしすら完璧だ。味も素っ気もない作業着の上着をはおって事務机に座っていたり、花火を作ったりしている姿に、「こういう人いるいる!」と思わせる。
こんなタレントみたいにかわいい人は地方都市の職人の世界にはいないとしらけさせることなく、航が気に入ってしまうようなビジュアルの持ち主だという納得感がある。こういう評価をルッキズムと指摘されるかもしれないが、実際問題そういうことはあるので仕方ない。
ひかりがぼそぼそとぶっきらぼうで毒舌なところも、本田翼だから許されるという事実。そういうどうしようもない世間の空気に本田はハマっている。そこが彼女の真価なのだ。
普通なのに埋没しない、本田翼の真価
とりわけ第7回の本田は光っていた。父の幽霊の意外な真相に星太郎は気づけないが、ひかりが見破る。それまで、ある種の闖入者で、父と息子を客観的に見ている存在、アクセント的なものに見えていた分、思いがけないお手柄のようなことがひときわ映えた。
高橋一生と橋爪功の名演技に注目していたところ、ふいに脇から本田が出てきてゴールを鮮やかに決めたようなものだった。
たぶん、彼女がいなかったら、ずーーんと重さがのしかかって30分のドラマにしては大作感が出てしまったであろう。飄々と曲者感ある橋爪と生真面目な印象のある高橋、ふたりは表現方法は違うものの、どちらも陰影ある叙情を滲ませている。
対して本田は、どこかクールで乾いた現代っ子の印象があって(30代になったので現代っ“子”でもないが)、橋爪と高橋が軽妙に演じながらもあぶり出してしまう、物語に潜む重量感をうまく和らげる。
本田翼が出ると小品感が出てしまうというわけではない。そこが彼女の俳優としての真価になる。
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