「本田翼の演技は下手ではない」と言える真の評価 普通なのに埋没しない、稀有な魅力を持つ女優

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さて、ここで、演技が巧いとか下手とかいう話をしよう。

『君の花になる』の放送中、筆者は某サイトで「本田翼の芝居は下手なのか」という件でコメントを求められ、下手ではないと思うと回答した。

「例えば、どんな役にもなりきる幅広さ、セリフを朗々と明晰に語ることができる技術力、喜怒哀楽の表現が迫真、まるでドキュメンタリーを見ているような生々しさ、というようなことは確かにないとは思います」というように答えた。

そもそも、フィクションにおける演技は、現実にいたら表現過多で声が大きくうるさく感じるようなものである。実のところ、演技の世界では、ふつうに見えることのほうが難易度が高いと言われているのだ。

その点、本田翼は一般人がふだん生活しているときのような身振り口ぶりで存在し、それでいて決して埋没しないところが特異なのである。

「乙女ゲーム」には合わなかった

そんな彼女がなぜ『君の花になる』では良さが生かされなかったのだろう。『君の花になる』は7人組ボーイズグループと、彼らの下宿の寮母を任されたヒロインによる乙女ゲームのようなドラマであった。

本田は、見た目は雑誌の着回しコーデページのモデルみたいな感じだが、前述のごとく、しゃべると淡々として媚がないので、ドラマの乙女ゲームのようなくっきりした輪郭を求められる雰囲気に案外そぐわなかったのだろう。

『6秒間の軌跡』は日常の会話劇なので本田の飾らない態度がハマった。彼女の前では名優・橋爪や高橋のほうが作り込み過ぎて不自然に見えてしまうくらいなのである。

いよいよ最終章に入るのが惜しい。もっと見ていたい。ドラマの最後にある、橋爪功の視聴者からの手紙を読むコーナーの後ろで座っている本田翼と高橋一生もいい感じなのだ。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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