「戦争で外国の友人と戦える?」突撃取材した理由 「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」監督に聞く

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そのときに大切なのは、アーティスティックなもののアウトプットの仕方です。そこで、お客さんの「顔」が見えていれば、深く刺さるものになりますし、お客さんが何かを持ち帰ってくれるものになると思います。「アートだからわからなくてもいい」というごまかしはせずに、見やすさ、わかりやすさの点である程度はお客さんに配慮する。

そうすれば「どういう意味だったのか」という考える余地も生まれるので、見終わった後に「とてもいい作品を見た」という気持ちになるのではないかと。

テレビの可能性は無限大

――テレビの今後についてはどのように感じていますか。

リアルタイム視聴を前提とする同時視聴率は下がっていますが、例えば、TVerの再生回数は上がっています。それは配信サイトの映画の再生数をはるかに上回るのではないでしょうか。

テレビ番組は切り貼りされてTwitterでバズっていますし、違法アップロードされてYouTubeでも見られています。かつてはテレビの地上波のリアルタイム視聴しかできなかったので、視聴者の数をダイレクトに把握できましたが、今はプラットフォームがインターネット上に無限にあるので、視聴者は多くても、それを数値化できていません。

テレビ番組に限らず、新聞や雑誌の記事も、オールドメディアの時代と制作者は変わっていませんが、プラットフォームがSNSに移行し、切り貼りされて、無法地帯になってしまっているのが現状です。

なので、かつてに比べてテレビの影響力は落ちていないというのが持論です。例えば、ドラマであれば、TVerの1話から3話までを配信し続けると、最初からドラマを見ていない人でも追い付いて、4話、5話から見ることができます。

そうすると、視聴者が見やすいように1話完結にこだわる必要性も低くなってくる。そこで、かつての連続ドラマのような作りをしようという動きも出てきました。

ドラマのMA(音声編集作業)についても、かつては、MA室で流して聴いた後にテレビスピーカーで聴いて調整していたのが、スマホでドラマを見る人が多いので、イヤホンでも聴いて最終調整をしている作品もあります。

作品を楽しむ媒体が変われば、それに応じて中身も楽しみやすいものに変えなくてはならない。

でも、作品やそれを求める人の本質は変わらない。テレビ局には人材も予算も豊富にあります。テレビの可能性は無限大だし、それを信じて今後も作品を作り続けていきたいと思っています。

熊野 雅恵 ライター、行政書士

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くまの まさえ / Masae Kumano

ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員、阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍の企画・製作にも関わる。

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