「戦争で外国の友人と戦える?」突撃取材した理由 「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」監督に聞く

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1967年は1964年のオリンピックと1970年の万博の間の年だったのですが、この作品を制作した2022年もちょうど2021年のオリンピックと2025年の万博の間だったので、同じ2つのイベントの狭間の年に同じような街頭インタビューから構成される作品を撮れば、当時と今の違いや今の日本の姿が浮かんでくるのではないかと思い、現代版の『日の丸』の企画を立ち上げました。

――どれぐらいの割合の人たちが質問に答えてくださったのでしょうか。

TBSの取材ということは明かさずに、浅草、原宿、渋谷、新宿、大井町で聞いたのですが、数百人の人たちに街中で声を掛けて、最後まで質問に答えてくださって、映像使用の承諾書まで取れたのは、3、40人でした。全体の1割に満たないぐらいの割合です。

浅草は、観光地ということもあり、外から来た人は気持ちが上がっていたと思いますし、地元の方は下町気質でラフに答えてくださる方が多かったです。

無視や笑われることも

一方、渋谷、新宿、それも、道玄坂や歌舞伎町にいたのですが、無視されるか、もしくは多くの人たちが嘲笑を向けて去っていきました。迷惑系YouTuberと思われていたようで、無視はもちろんのこと、とにかくみなさん逃げたり、去っていきました。「あんた頭おかしいだろ」と笑って去っていく人もいましたね……。

回答してくださった方々は、最後に「TBSの取材です」と言うとみなさん安心し、「がんばってください」「応援してます」と言って、映像の使用承諾書にサインをしてくださいました。最初から「テレビの取材です」と言えば、もっと多くの人たちに回答してもらえたのかもしれません。

佐井大紀監督(写真:筆者撮影)

――なぜ、取材であることを明かさず、いきなり質問するスタイルにしたのでしょうか。

「日の丸について、どう思いますか?」という質問から始めたのは、突然そういう質問をされたときにどういう反応をするのか、ということをそのまま映し出すことに価値があるのではと思ったからです。

本当は違うことを考えているのに、取り繕って答えている人もいるかもしれない。それは、ある種の芝居とも言えると思いました。寺山修司の「市街演劇」(市街地を劇場に見立て、俳優たちが一般市民を演劇に引き込むスタイルの演劇)と通じるところがあるのではないかと。

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