「戦争で外国の友人と戦える?」突撃取材した理由 「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」監督に聞く

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――「日の丸」はある意味、日本社会においての聖域になっている気もします。

「それについて口にするのは野暮じゃない?」という雰囲気は確かにありますよね。そして、それを口にしないので、自分の国家観はもちろん、政治について考えることも少なくなっているのかもしれません。

そうやって、政治と自分が乖離してしまっている人も多いし、そのことが、今の政治不信や選挙の投票率の低さ、そして、例えば統一教会問題など「自民党一強政治」による弊害を生んでいるのかもしれません。

逆に「日の丸について語るのは野暮」という風潮の「野暮」の中身を解き明かし、それに対して問題提起することは大切なことで、振り返ればこの作品もその流れの中にあると感じています。

テレビ番組と映画制作の違い

――普段はテレビ局でドラマを制作されていますが、今回は映画に挑戦し、演劇制作も手掛けています。それらの違いはありますか。

テレビでは、映画や演劇でクローズアップされる文学性や芸術性を前面に押し出してしまうと、難解でついていけなくなってしまうことが多いです。「客を弾く」という言い方をしますが、テレビではいかにお客さんを飽きさせないで楽しませるか、が勝負になっています。

一方、映画や演劇はそうではありません。映画であれば、1900円の入場料を払ってみるだけの「価値」が求められますし、もちろん、その中には文学性や芸術性が含まれます。

職業としては前者に属し、エンタメを作ることを生業としている自分が、映画や演劇を手掛けるときには「カルチャーが混ざる」ような気がしています。ドメジャーにいる人間が“疑似アングラ”をやるというか。

寺山修司が1967年に制作した『日の丸』を、今、2022年の『日の丸』として作品にしたのも、アングラ的なもの、アーティスティックなものはそのままに、大衆性を入れて換骨奪胎したという意識がありました。

燃え殻さん原作の朗読劇『湯布院奇行』もそうです。どちらに寄っても退屈なので、その間に球を投げるのがいちばん気持ちいい。その面白さはとても意識してますし、それがいちばん難しいと感じてます。

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