「戦争で外国の友人と戦える?」突撃取材した理由 「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」監督に聞く

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――印象に残った回答はありましたか?

劇中でも登場しますが、「今の戦争は、人を殺すだけではなく、経済制裁の手段を用いたものもある。一概に殺す、殺さないとは言えない」という回答がありました。

インタビューは、ロシアによるウクライナ侵攻の前に行われましたが、昨年2月末からのロシアの行動を見れば、「大国は人を殺さない」という前提は成り立たず、違う回答になったのではないかと……。

「日本人を守るために日本は戦争するべきだ。しかし、日本人の定義は一義的ではない」というニュアンスの回答をした方もいました。顔は出さないという条件の上での回答でしたが、そのことも含めて1つの答えのような印象を受けました。

――寺山修司は当時、この番組を「情念の反動化への挑戦」と表現し、佐井監督自身はそれを「凝り固まった人々の心や考えを突き動かそう」という決意と捉えたとのことですが、今回の作品のコンセプトはどのようなものなのでしょうか。

1967年に寺山修司が構成を担当したドキュメンタリー番組(©TBSテレビ)

街頭で質問を繰り返すことで「日本の姿が浮かび上がるのではないか」と思って撮り始めたのですが、浮かび上がらせようとするものが大きすぎて、つかみ切れなかったというのが正直な感想です。それを改めて思い知らされたというか……。

1967年版の『日の丸』を見たときに、自分自身の「情念の反動化=固定観念のようなもの」に対して、制作者の寺山修司と萩元晴彦が挑戦してきたような気がするんです。それに対して僕が反応してこの作品ができた。

例えば、一部を切り取って「これが今の日本です」と提示することはできたのかもしれません。ただ、それも違うという気もしていて。まさにこの作品自体が自分への問いという気がしました。

「日の丸」を語らない理由

――「なぜそんな政治的な事柄について聞くの?」というような政治に対するアレルギーは感じましたか。

物すごく感じましたね……。政治と自分の生活が密接していないのかもしれません。

劇中でもテレビマンユニオン最高顧問の今野勉さんがおっしゃっていますが、多くの日本人がそれについては「考えないようにしているし、考えるための材料を与えてもらっていない、教育を受けていない」ということに尽きる気がしています。

センシティブな話なので話さないようにしよう、と。暗黙の了解のうえで調和を保っているというのが実態なのではないでしょうか。

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