茨城で月3万個クリームパンを売る個人店の正体 「パン工房ぐるぐる」が徹底する味へのこだわり

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

クリームパンの原材料には茨城県産の奥久慈卵、同県産の牛乳、同県産小麦「ゆめかおり」を使う。食パンの小麦も同じだ。県内食材と味が人気を呼び、2019年に茨城おみやげ大賞の「いえみやげ部門大賞」も受賞した。最近はスーパーを中心に卸販売にも力を入れる。

「多くの方に『茨城には地元食材のクリームパンもある』と知っていただきたいのです。首都圏に比べて茨城県は地味で、魅力度ランキングでは最下位になり、時にイジられる県ですが、魅力的な食材がたくさんあります。パンを通じて、食材も伝えたいと考えています」

直営店舗は県内3店で、オンライン通販や催事にも力を入れるが、スーパーなど大手小売店への供給により、商品の認知度をさらに高めたいのだろう。

販路拡大には注力するが、「パンのおいしさ」への姿勢は変わらず、鮮度への思いも強い。

「このクリームパンの賞味期限は2日です。お客さまからは『賞味期限を延ばしてほしい』というご要望があります。悩ましいのですが、そうなると保存料を入れなければならず、味が変わってしまいます」

店頭に大量陳列された「奥久慈卵のとろ~りクリームパン」は品切れになることも多い(2022年秋に筆者撮影、商品価格は当時)

一般に「パン屋は日持ちする商品が欲しい」という。毎日朝早くからパンを焼き上げ、食パンや総菜パン、菓子パンをつくる工程の繰り返しだからだ。だが、効率重視にはしない。

「たとえば、水戸店には『麦の香り』と名づけた食パン(320円+税)があります。生地をこねる前段階にも時間をかけ、通常の食パンに比べて1日多く手間がかかりますが、素材のよさを感じていただきたいのです。日本でこの製法を採る店は、私が知る限りありません」

実家は農家、きょうだいも「食のものづくり」に進む

地元産の食材や手間ひまにこだわるのは、実家が「栗原農園」なのもあるだろう。JA(農業協同組合)に勤務した父が独立して始めた農園だ。

「子ども時代に家業を手伝ったとき、母が楽しそうに作業していました。実際には苦しいときもあったのでしょうが、その笑顔が印象的でした。現在、4歳下の弟が農園を継いで農業を行い、8歳下の妹はお菓子職人となり『菓子工房あかり』を開業。3きょうだいともに“食を通じたものづくり”に携わっています」

次ページ栗原さんを支える中学2年の原点
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事