茨城で月3万個クリームパンを売る個人店の正体 「パン工房ぐるぐる」が徹底する味へのこだわり

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「1号店をひたちなか市で開業したので、以前から市の特産品を使った商品を開発していました。その際に茨城DCのことを知り、商品を応募したら採択されたのです」

使う品種は「べにはるか(紅はるか)」。2010年に品種登録された新顔だが、甘いさつまいもブームをつくった「安納芋」に匹敵する甘さを持ちながら、すっきりした後味が特徴の品種だという。商品開発のストーリー性も意識して、地元産にこだわるのだ。

「ぱくぱく干しいもシュトレン」はJRと茨城県と共同で開発した(写真:ぐるぐる)

「世界に誇れるパン屋」にしたい

栗原さんへの取材では「幸せ」という言葉も何度か出てきた。同社の企業理念は「パンを通して人の幸せを実現します」だ。耳心地の良い言葉だが、過去には失敗経験がある。

「会社を創業して5~6年は年110~120%ペースで業績も伸びました。お店をやりながら『世のため、人のため』の使命感で進んでいたのです。

でも、多方面に気を遣いながら活動することに疲れ、〈自分の心のおもむくままに感情的にやろう〉と考え始めました。実際にその姿勢で進めると、社内の雰囲気は悪くなり、従業員の離職も相次ぎました。〈これではダメだ、従業員の幸せが、結局自分の幸せになるのだ〉と猛省し、本筋に戻したのです。痛い目にあって『幸せ』の本質を知りました」

まもなく東日本大震災発生から12年となる。

1号店がオープンしたのは震災が起きた年だ。ひたちなか市も被害を受けたが、「地域のためにもやるべき」という思いで開業したところ、当初からお客さんに支持されて人気店となる。後年、常連客の1人から「あの大変な時期にパン屋さんがオープンしてくれて、気持ちが明るくなった」と言われた。

現在は「世界に誇れるパン屋にしたい」も掲げる。「ibaカップ」への思いも深まった。

「今回は市川美月さん(東京都葛飾区『ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ』シェフ)と一緒に出場します。お互いのスケジュールを調整しながら、毎月合同トレーニングを行い、それ以外に自主トレを続けながら、大会への準備を進めています」

好成績を収めれば、パン職人への注目度も高まり、夢の実現にも一歩近づくはずだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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