「担当者が自分のミスを隠そうとしたのではないか」とヒデアキさんは推測する。
担当者個人の資質の問題かと思いきや、新たに交替した担当者も勤怠表や、更新時に必要な労働条件通知書を期日になっても持参しないことがあった。やむを得ずメールで支社や本部に問い合わせてもなしのつぶて。後で調べたところ、この派遣会社の系列会社が、派遣労働者を社会保険に加入させなかったとして、厚生労働省から事業停止命令を受けていたこともわかったという。
賃金と残業代が払われていなかった
さらには悪質な賃金未払いにも遭遇した。あるとき、ヒデアキさんが給与明細を確認したところ、有給休暇取得日の賃金と残業代が払われていないことがわかったのだ。本来振り込まれるはずの金額より1万円ほど少なかったという。
ヒデアキさんが担当者にメールで問い合わせると、有休については会社側が手続きを忘れていたこと、残業代未払いについては派遣先会社が勤務時間を15分単位で切り捨てているからだという旨の説明があった。有休分の支給は翌月になるが、もし早く振り込んでほしいなら別途前借申請をするようにとの“アドバイス”まであったという。
ヒデアキさんは「会社のミスなのに、なぜこっちが申請しなければならないのか」と憤る。それに労働時間は原則1分単位で計算するよう、労働基準法で定められている。ヒデアキさんが派遣先の計算方法は違法だと指摘すると、またしても耳を疑うような答えが返ってきた。会社側の主張を、ヒデアキさんの携帯に残っているメールの履歴から抜粋してみよう。
「(労基法の規定は)認識しております。ただ『15分単位の計算』自体は違法ではありません。~中略~(派遣先が15分単位で切り捨てていると説明したのは)お支払いしないという意味ではなく、どのような計算でそうなったかという質問に対する意味でした」
これはただの屁理屈なのでは……。繰り返すが、ヒデアキさんは発行済の給与明細を見て、「お支払い」されていないから問い合わせをしているのだ。「『ちょっと何言ってるかわからない』、ですよね」。ヒデアキさんがあきれたような表情で、人気お笑いコンビ・サンドウィッチマンが使う有名なセリフを口にした。
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