ウクライナ戦争1年、なぜ停戦へ至らないのか 地域紛争を超え、先進国と後進国の戦いへ

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しかし国民のほうは、この戦争で経済成長を享受できていないどころか、さまざまな被害を被っている。経済制裁によるエネルギー資源の枯渇、また農産物や工業製品の輸入の困難、それによる物価の上昇である。

ウクライナでの果てしない戦いの中、西欧の市民も最近、政府批判と戦争批判を行い始めている。西欧のあちこちで展開するデモは、一見すると年金問題であったり、石油問題であったりするが、最近では明確にウクライナへの武器輸出批判というデモに変わりつつある。

疲弊するばかりの国民

年金の減少、インフレは、戦争の継続、とりわけ政府による武器支援から生まれていると感じはじめているからである。

結局、今の状況は、一部の資本家と国家エリートなどが利益を独占するだけで、国民が疲弊していることだ。さらには、当事者であるロシアとウクライナでは、この終わることのない高度な武器による戦争で、毎日多くの人々が死んでいるときている。なんと常軌を逸した話であろう。

これが21世紀の戦争と平和の現実だとすれば、われわれはいまだに19世紀の「戦争と平和」という葛藤から一歩も脱却していないということである。早くこの悪夢から眼を覚まし、世界戦争へエスカレートする前に、停戦のための外交努力を行うべきであろう。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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