国家による軍の創設が市場に巨大な需要をもたらしたことは、間違いない。とりわけ軍が組織化され、膨大な武器や被服、食糧備蓄などの需要がもたらされれば、その需要を満たすべく、産業は発展する。大砲の需要が製鉄所の高炉の建設に結びついたことも正しい。
武器需要が資本主義経済発展にとって重要なものであることは、植民地争奪戦争、経済的ライバルの屈服などといった直接的軍事力の行使の問題だけを意味するものではない。経済的システムを含めた自国優位の経済体制が、軍事力によって形成されるからである。
だからこそ、こぞって武器の開発にしのぎを削るのだ。軍事技術の優位が経済的利権の獲得に寄与するならば、経済的裕福さは戦争の上に成立していることになる。
停戦合意よりも武器の輸出
こう考えると、資本主義システムの恐ろしい意味を暴いたプルードンやトルストイの問題意識を、改めて思い出すべきかもしれない。資本主義経済、とりわけ先進国の経済は、かなり長い間長期経済停滞の中にある。新しい発展を促す市場の拡大や新製品の発明がない。その結果、先進資本主義国の経済成長は軒並み弱い。一方、その先進国の消費市場となっていた後進地域は、自ら経済成長を遂げ、今や先進国のお株を奪う状況にある。
ここで先進国は、後進地域を再び従属し、自らの経済発展と優位を確保したいという思惑に駆られる。こうして代理戦争として、ロシアとウクライナの戦争が出現したともいえる。
2つの国はともに西欧の外の地域の戦争といえるが、ウクライナは西欧の代理として、ロシアは後進地域の代理として登場している。この戦争それ自体の最初の原因は、すでに述べたように東西の対決などではなく、スラブ社会の小さな問題にすぎない。しかし、これがいつのまにか世界戦争に発展する大きな問題となったのだ。
この戦争のおかげで、軍事生産市場は活況を呈しはじめた。軍事生産は、裾野の広い分野である。その波及効果を考えると、なるほど好景気も考えられる。これを機会に、各国とも、それまで控えていた武器の生産や軍事費の拡大を、一気に図ろうとしている。今では、軍拡は当然の事実として進んでいる。
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