「メールのccから外された」50代男性が働かない訳 「働かないおじさん」というレッテル貼りに苦悩

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ステレオタイプ脅威とは、「自分と関連した集団や属性が、世間からネガティブなステレオタイプを持たれているときに、個人が直面するプレッシャー」と定義され、その脅威にさらされた人は不安を感じ、自分自身もそれを自らの真の姿だと考えがち。

ステレオタイプが内面化してしまうと、自尊心が低下し、自分への期待値を下げ、自己不信などを引き起こして、その能力や性格にまでダメージを与えることがわかっています。

たとえば、「女性は数学が苦手だ」というステレオタイプによって、実際に女性の数学の成績が落ちることは多くの実験で確認されていますし、「高齢者は物忘れがひどい」というステレオタイプは、本当に老人の記憶力を低下させることもわかっています。

「50代は高い給料もらっているくせにモチベーションが低い」というステレオタイプもまた、おじさんのやる気を奪います。

「周りから何も期待されていない」「経験を話すと自慢だと勘違いされる」「余計なことをしてくれるなと思われている」などと、自ら「働かないおじさん化」していくのです。

しかも、「ステレオタイプ化」には伝染力があるため、「働かない、やる気のないおじさん」に囲まれた環境に身をおくと、その人の「働かないおじさん化」が加速する。

追い出し部屋とは、いわば「働かないおじさん製造機」のようなもの。役職定年者があふれる現場の伝染力もかなり深刻だといわざるをえません。私たちの言動の多くは、社会のまなざしという得体の知れない空気に操られています。自分の能力だと信じているものでさえ、まなざしが深く関係しているのです。

「誰にも期待されない」ことで“働かないおじさん”に

興味深い調査結果を紹介しましょう。2000~2002年に拡大した希望退職の波が、2008年のリーマンショックで再拡大した2010年に、定年退職し雇用延長や再就職した人たちを対象に行われた調査です(※独立行政法人 労働政策研究・研修機構「定年退職後の働き方の選択に関する調査研究結果」)。

対象者に、「セカンドキャリアがスタートした直後の自己イメージ」を尋ねたところ、8割の人が「人並みにやっているし、寂しくなどなかった」と答えました。ところが、新しい条件や環境で働き続けてみると、多くの人たちが当初考えていた働き方を断念していたことがわかりました。

・自分のスキルを生かそうと張り切っていたのに、誰からも期待されない
・賃金が下がることはわかっていたけれど、実際に働いてみると低すぎる
・権限が縮小した

そんな現実に失望し、不満が募り、自尊心を低下させ、挙げ句の果てに、

・気楽に仕事をするようになった
・職場の人と勤務時間外に付き合わなくなった
・仕事に長期的な見通しを立てなくなった
・重い責任を負うような仕事のやり方はしないようになった

など、自ら率先して「働かないおじさん化」していたのです。

会社員とは、「会社の期待どおり、あるいはそれ以上の働きをする」ことで評価されてきた人たちです。ところが、新天地では誰からも期待されなかった。会社も上司も、誰も期待してくれないのです。

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