患者数100万~200万人「副鼻腔炎」はどんな病気か 「症状は?治療は?」病気に詳しい専門医が回答

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実は30年ほど前まで、副鼻腔炎の手術は内視鏡ではなく、歯ぐきを切ってほほの骨をノミで削り、副鼻腔にたまった膿や粘膜を取り除く方法で行われていました。手術後に顔面が腫れるなど、体への負担が大きい手術だったのです。ですから現在の内視鏡を用いた手術は昔の手術とは格段の違いがあり、負担が少なくなった手術といえます。

ただし、副鼻腔は脳や眼球のすぐそばにあるので、内視鏡手術は決して簡単な手術ではありません。稀にですが、視力低下や複視、髄液漏などの合併症が起こることもあるので、手術を受ける場合は、内視鏡手術の技術が認定されている「日本鼻科学会認定手術指導医」のいる医療機関が勧められます。

Q:内視鏡手術をしてもよくならないケースもありますか?

A:「抗菌薬を服用してもなかなかよくならない」「鼻茸を取っても、繰り返し新たな鼻茸があらわれる」副鼻腔炎として、「好酸球(こうさんきゅう)性副鼻腔炎」があります。

好酸球性副鼻腔炎とは?

Q:好酸球性副鼻腔炎とはどのような病気ですか?

A:一般的な慢性副鼻腔炎の場合、鼻茸は1房だけ(単房性)のことが多いのですが、好酸球性副鼻腔炎ではバナナの房のように、複数の鼻茸(多房性)ができている場合が多いです。また、この病気は鼻に限定した局所の炎症というより、全身性の好酸球性炎症の病気と考えられており、喘息を合併していることも多いです。

全身性の体質がからむ病気であるため、鼻だけを手術で治しても再発することが多く、難治性であるといわれています。

また、鼻汁や痰も、一般的な慢性副鼻腔炎よりも、さらに粘度が高いのが特徴です。なお、鼻茸には好酸球という炎症細胞が多数、集まっていることがわかっています。

もう一つ、好酸球性副鼻腔炎では、においがわからないという症状を訴える患者さんが多いです。「まったくわからない」と言う人も少なくありません。嗅覚障害は高度であることが多い病気なのです。なお、好酸球性副鼻腔炎のうち中等症と重症は国の指定難病になっています。

Q:好酸球性副鼻腔炎の診断は難しいのですか?

A:耳鼻咽喉科の専門医であれば、比較的容易に診断ができる病気です。ただし、診断には経鼻内視鏡検査が特に有用です。

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Q:治療はどのように行われますか?

A:軽症の場合は内視鏡手術によって鼻茸を除去したり、副鼻腔内をきれいにすることでよくなることが多いですが、中等症や重症の患者さんは先ほどお話したように、手術をしても再び、鼻茸が出てくることが多くあります。

このため、手術を繰り返すか、炎症を抑えるステロイド薬の内服投与を行うしか方法がありませんでしたが、2020年3月から使用できるようになった生物学的製剤のデュピルマブという薬は、嗅覚の改善を含め、顕著で速やかな症状の改善が期待できるようになってきています。該当する人でこの治療を受けていない人は、主治医に相談することをお勧めします。

関連記事:【鼻づまり】長引くグズグズ「副鼻腔炎」が原因?
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東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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