近く承認へ、「やせ薬」セマグルチド乱用への不安 「15%体重が落ちる」とされる薬の大問題

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「やめたら(体重は)戻ります。これは臨床研究でも明らかになっています。では、この薬を一生打ち続けるかということになるわけですが、おそらく1回、数万円というかなり高い薬価になると考えられます※。それを毎週、打つことになりますから、(金銭的な負担は)大きいですよね」(笠間医師)

※ノボノルディクスファーマのGLP-1受容体作動薬オゼンピック皮下注1.0mgの薬価が5504円(2.0ミリグラムで1万1008円)であることから、オンラインの診療料を加味した価格。

オンライン診療でやせ薬を処方

今回の承認の最大の懸念は、先に挙げた対象者以外の人が使うのではないかということだ。

保険診療のルールに則れば、「ちょっとダイエットしたい」程度ではセマグルチドを処方してもらうことはできない。これについては、日本肥満学会の横手幸太郎理事長が、「適正使用されるよう考えていく」(日刊薬業)と述べている。

実は、不適切な使用については、今回の薬の承認とは別に以前から指摘されている。“やせ薬”と称してオンライン自由診療でGLP-1受容体作動薬を処方しているからだ。

オンラインには大きく2つある。1つは保険診療で行うオンライン診療、もう1つは自由診療の下で行われているオンラインだ。笠間医師はGPL-1受容体作動薬の使用について、

「(保険診療であっても)オンライン診療を初診からやるのは、非常にリスクがあります。当院で診療をするにしても、必ず対面で、糖尿病専門医が診療します。どんな薬でもそうですが、その薬が合わない人がいますし、合併症や副作用についても理解しておかなければなりません。何より、(合併症や副作用が)起こったときの対応が大事です」と話す。

そのうえで、「オンライン診療が可能なのは、何度か診察をした後に(オンライン診療でも)大丈夫と医師が判断した人に限ります」と述べる。

オンライン自由診療でのGLP-1受容体作動薬ダイエットは、昨年12月23日の社会保障審議会医療部会でも、不適切事例として挙げられている。

同部会の委員の1人は、一部の医療機関がGLP-1受容体作動薬のダイエット治療を「メディカルダイエット」などという名称でインターネットを通じて広告している現状を懸念し、一般人への健康被害が広がらないよう、医療機関に対して、厚生労働省が改善を促すよう求めた。

国民生活センターでも注意喚起している(画像:国民生活センター

全国の消費生活センターも注意喚起している。全国消費生活情報ネットワークシステム(パイオネット=PIO-NET)にも、以下のような声が寄せられている。

●オンライン診療を受け、糖尿病に使う薬をダイエットにも使えるという理由から処方された。薬を飲んだところ下痢、腹痛、頭痛、めまいの症状が出て治まらないため、かかりつけ医を受診した
●美容クリニックのサイトからオンライン診療を受け、食事制限や運動の必要もなく、毎日注射をすればやせると言われた。薬を使用すると、吐き気、めまい、嘔吐、倦怠感の症状が出た(後略)
●病院で医師から「いいやせ薬がある」と勧められ、このやせ薬を処方してもらい服用していたところ、意識を失い転倒して、唇などをケガした

この問題については、2020年6月に日本医師会でも指摘している。

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