近く承認へ、「やせ薬」セマグルチド乱用への不安 「15%体重が落ちる」とされる薬の大問題

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日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」によると、肥満とは「脂肪が過剰に蓄積しているBMI25以上の状態」のこと。

対して、肥満症は「肥満によって健康問題(2型糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、変形性膝関節症など)が起こっていたり、健康問題が起こることが予測されていたりする場合で、医学的に減量を必要とする病態」をいう。後者は「病気」とみなされ、セマグルチドの適応となる。

セマグルチドでやせるメカニズム

セマグルチドは小腸から分泌されるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンの遺伝子組み換え薬。脳の食欲に関わる部分に働いて食欲を抑えたり、腸の動きを抑えたりすることで、減量効果をもたらすとされている。

では、その効果はどれくらいなのか。発売元のノボノルディスクファーマは、2020年6月に第Ⅲ相試験(臨床試験)の結果を公表している。

同社の報告によると、被験者は合併症のある肥満、または過体重の2型糖尿病患者1210人。生活習慣の介入を行ったうえで試験を実施した。

被験者をランダムにセマグルチド2.4ミリグラム投与のグループと、1.0ミリグラム投与のグループ、そしてプラセボ(偽薬)のグループに分け、68週間後の結果をみた。すると、2.4ミリグラムのグループは9.6%の体重が減少したのに対し、1.0ミリグラムは7.0%、プラセボのグループは3.4%だった。

ほかにも、合併症がある肥満または過体重の成人を対象にした臨床試験では、有効性(減量効果)が認められ、別の試験でも内臓脂肪の量が減少したことがわかっている。

「これらの臨床試験の結果から、体重が増えることによって起きる健康被害をかなり抑えることができる」と笠間医師は言う。

肥満治療のスペシャリスト笠間和典医師(写真:四谷メディカルキューブ提供)

笠間医師は薬の用量にも注目する。今回、承認される見込みのセマグルチドは、0.25、0.5、1.0、1.7、2.4ミリグラムの5種類。最大容量の2.4ミリグラムは先に紹介した臨床試験で使われていた量と同じだ。「これだけ使うと(体重が)すごく落ちる。体重の15%くらいは落ちる」(笠間医師)という。

一方、気になる副作用の問題では、悪心(気持ちが悪くなる)や嘔吐、便秘、下痢など。用量が増えればそれだけ副作用が出やすかったり、強くなったりする。

さらに厚労省は14日、胆嚢炎や胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸といった重大な副作用が出ることがあるとして、添付文書の改訂を指示した。

何よりセマグルチドは“夢のやせ薬”ではない。あくまでも、一時的に減量ができる対症療法であり、根本的な治療にはならない。

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