近く承認へ、「やせ薬」セマグルチド乱用への不安 「15%体重が落ちる」とされる薬の大問題
当時副会長だった今村医院(東京都板橋区)院長の今村聡医師は、「糖尿病治療薬の一部が、個人輸入や美容クリニックにおいて、“やせ薬”として不適切に使用されている実態がある」と述べ、「健康な方が医薬品を使用することのリスクおよび医薬品適正使用の観点からも、このような行為を禁止すべき」(日医on-line)と話している。
コロナ禍でオンライン診療の普及が進むなか、事態が深刻化しているという声もある。改めて今村医師はこう述べる。
「GLP-1受容体作動薬によるオンライン診療では、対面の診療もしないで、“ダイエット薬”として処方されている。日本の場合は肥満もさることながら、若い女性のやせや、やせ願望も問題になっている。医師の裁量というエクスキューズ(言い訳)で行われている自由診療では、今回、示されたような対象者以外にも処方されている。それは大きな問題だ」
問われる医師のモラル
今村医師によると、GLP-1受容体作動薬を長期に使用すれば、急性膵炎(すいえん)や腸閉塞、膵臓(すいぞう)がんなどを引き起こす恐れがあるという。GLP-1受容体作動薬のダイエット目的での処方は、安易に世の中のニーズに応えてしまう「医師側のモラルの問題も大きい」(今村医師)という。
今回、セマグルチドが承認される見通しになったことで、こうした不正使用が広がらないとはかぎらない。今村医師は続ける。
「セマグルチドは安全性も有効性も高い、それが科学的に認められていることについては、その通りだと思います。ただ、承認するかどうかはそれだけでなく、社会的、財政的といったさまざまな面を本来は考慮したうえで検討すべきです。結局、ルールを守らないで使われている現状が問題であるので、一定の規制などが必要ではないでしょうか」
厚生労働省は自由診療を提供する医療機関などのウェブサイトの適正化につなげて、消費者トラブルを減らそうと「ネットパトロール事業」を2017年度から開始している。違反広告をしている医療機関を自治体に通知し、改善に向かうように促しており、一部はその要請に応じて改善させたり、広告を中止したりしているが、要請に応じない医療機関もあり、思うような効果が出ていないのが実情だ。
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