テレビのイノベーションは大阪から始まる! 立ち上がれ!カウンターカルチャー
それでもたまに大阪に行くと、ホテルのテレビで見る深夜番組は、もうひとつの中心としてのパワーではちきれそうだ。
20年前の漫才ブーム以降、東京では見なくなった「ザ・ぼんち」が20年前以上のはじけっぷりで画面を暴れ回っていたりする。去年訪れたいくつかの関西キー局のロビーではいまもポスターに「やしきたかじん」の顔がどーんとあって、彼の冠のついた番組を宣伝している。ポスターから「東京に何もかんも明け渡したらアカンで!」という声が聞こえてくる。大阪はいまも堂々と大阪だし、東京に何も譲っていないことがそこへ行くとわかる。
大阪キー局には新しい使命があるはず
これからまた大阪は、筆者が子どもの頃のような存在感をテレビ界で発揮していかねばならないのだと思う。それは、ローカルの意地とかいう精神論の前に、時代の要請が高まるはずだから。大阪自身がもう一度新たなパワーを持つべきだというのもあるが、地方代表として、新しいローカルの有り様の範となるべきだからだ。
そのための挑戦がすでにはじまっていることは、今号の特集で各記事に書かれているとおりだ。大阪というカウンターカルチャーがまた動き出しているのだ。
それを裏付けるような研究成果が3月3日のNHK文研フォーラム『テレビ視聴の東西差』で発表された。2005年の調査では、20~30代の視聴率上位番組は関東と近畿でかなり一致していた。ところが2014年になると近畿の上位番組が大阪制作もしくは関西芸人が司会する番組中心になった。大阪パワーが地元での具体的な視聴に表れはじめているのだと言える。
筆者なりに大阪キー局でトライして欲しいと考えているのは2点。ひとつは全国に(そして世界に)発信することと、もうひとつは地域にいままでにも増して密着することだ。
在京キー局は共同で見逃し無料視聴の実験をはじめるようだが、大阪キー局が自社制作の番組をまとまって視聴できるウェブサイトをつくったら、おそらくびっくりするほど再生されるだろう。東京キー局の見逃し配信はCMをつけてかなりの売上を稼ぎだし、出演者にリターンができるようになりつつあると聞く。関西でしか放送されてない番組をネットで配信すれば全国の人が見るようになり、広告収入も収益性が大いに見込めるはずだ。ローカル局の自社制作比率は平均9%だが、関西キー局では30%強が普通。配信できる資産は、日々大量に生み出されているのだ。
さらにそれを英語と中国語の字幕をつけて配信すれば、世界中からアクセスされる。海外の人びとに関西文化をダイレクトにアピールできるのだ。観光客の関西への誘致に絶大な力を発揮するはずだ。そして日本企業の海外向けのCMをつければ、広告収入も稼げる。中国市場を重要視する日本企業はいまや多く、中国国内で広告を打つより効率的だと感じてもらえるかもしれない。
こうした外側へのアピールと並行して、地域に新しい形で密着していく内側への努力も重要になる。実はそのためにこそ、マルチスクリーン型放送研究会のSyncCastのような、番組を見ながら使えるセカンドスクリーンは役に立つ。うまく使えば、地域企業に合った形の情報配信をサポートできるのだ。15秒で商品認知をさせるテレビCMに加えて、事細かな情報をセカンドスクリーンで送り届けることは、地域の企業のニーズにかなうはずだ。
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