アイデアが出ないとき、脳科学的に「散歩が効く」訳 ぼんやりしたり、仮眠を挟んだりするのもOK

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収束的思考と拡散的思考のあいだで「ゆらぎ」が起こることでモチベーションが高い状態を維持できますが、意図的に2つの思考を行うことは難しいものです。思考のタイプを切り替えようとするのではなく、あたため期を導入するほうが簡単です。

あたため期に何を行っているのか全体像は明らかになっていませんが、1つの例として「マインド・ワンダリング」があげられます。マインド・ワンダリングとは、いわゆる「心ここにあらず」といわれる現象で、心がさまよっている(ぼーっとしている)状態のことをいいます。研究によると、いいアイデアがひらめく直前に、マインド・ワンダリングをしていることが多いといいます。

4段階のモデルでいえば、いいアイデアがひらめく直前はあたため期に相当するので、この時期にマインド・ワンダリングをするのがいいのです。脳科学的研究においても、マインド・ワンダリング中は、創造的な思考が活発に行われる「デフォルトモード・ネットワーク」が優位になっているといいます。

散歩の習慣がある人は創造力も高い傾向

これまでの研究によれば、完全に休息状態のときよりむしろ、認知的負荷の低い簡単な課題や行動をしているときにマインド・ワンダリングが頻繁に起こるようです。その例として、簡単な算数問題や散歩があげられます。とくに、散歩の習慣がある人は創造力も高い傾向にあるようです。

例えば、数学者のアンリ・ポアンカレは、難解な数学の問題に煮詰まったあと、一度問題から離れるために散歩に出かけるべく、乗合馬車の踏板に足をかけた瞬間にフックス関数をひらめいたといいます。「解決法がわかるまでがんばる」より「頭が煮詰まったから、ちょっと散歩をする」というのは、早く問題解決するために理に適った行為なのです。

問題から一度離れることで創造的思考が促進し、世紀の発見につながったという例はほかにも多くあります。

アインシュタインやエジソンが、仮眠や昼寝を挟むことで思考能力を上げていたというのも有名な話です。睡眠は脳を休息させるだけでなく、起きているあいだに得た短期記憶から必要な情報だけを選別して圧縮し、長期記憶へ送る作業を行っています。目覚めた瞬間に新しいことがひらめくのは、睡眠中にこの選別や圧縮によって脳の記憶スペースが広がったり、知識が整理されたりしたためなのです。

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