つまり、過ごす時間の長さではなく、「話す」「子どもの好きな遊びをする」「一緒になにかを読む」など、いかに心を通わせ合う時間を過ごすかが大切なのです。そして、その工夫をして頑張っている自分自身を親御さんが認めてあげることが、子どもだけなく親御さんの心の安定にもつながります[*6]。
子どもと過ごす時間は大切ですが、仕事のシフト時間が夜であったり、残業で遅くなったりして、顔を向き合わせることができない場合もあるでしょう。そんな時は、例えば、お弁当袋にメモを入れる、洗面所の鏡にメッセージを貼る、家の中の家族用のボードなどに応援の言葉を書くなど、ほかの方法で言葉を交わす習慣をつくるのがおすすめです。
「子どもの心に想いを馳せる瞬間」が、少しでも増えていくとよいですね。
話す時間を確実に持てたり、へそを向き合わせて聴いてもらったり、自分に気持ちを向けてくれているという経験の積み重ねで、子どもから話してくれるようになるかもしれません。
「べつに…」と素っ気ない返事をされると心配になる
10歳になった息子が、急に家で話さなくなってしまいました。学校でのことを聞いても、「べつに……」「なにもない」と言うだけで、様子がまったくわかりません。どうしたら息子から話を引き出すことができるでしょうか。
「べつに……」「なにもない」と素っ気ない返事をされると心配になってしまいますよね。10歳くらいのお子さんは思春期に入りはじめるため、体も心も急速に成長しています。このため、急に話さなくなってしまうことは成長過程としてあり得ます。この年齢の子どもたちは否定や非難にも敏感なため、話を聴く時に、コミュニケーションのバリケードに特に気をつけたいものです。
知らず知らずのうちに否定や説教をしていないか、正論を押しつけていないかを振り返り、まずはアクティブリスニングの基本を心がけましょう。
「学校どうだった?」「今日、なにしたの?」といった直接的な質問は、思春期の子どもには「面倒」あるいは「プライバシーの侵害」と受け取られる可能性があります。
対話のポイントは、子どもが興味を持っていることに興味を持つことです。例えば、選択理論心理学では、「上質世界(quality world)」という考え方があります[*3]。上質世界は、価値観、家族や友人、場所、趣味、モノなど、自分の心理的欲求(例・人とのつながり、自律性、自己効力感、楽しさ)を満たしてくれる、いわゆる個人の大切なものが詰まった写真アルバムのようなものです。
子どもの興味も、この上質世界に含まれます。今、子どもが楽しいとハマっているものはあるか? 一緒にいるとつながりが感じられるような大事な友人となにをしたら楽しいのか? 「自分でできた!」と達成感(自己効力感)を覚えるような出来事はあったか?
学校や塾に関する直接的な質問をするよりも、本人の上質世界にあることを予想して質問してみてください。今までの「我が子」と違う一面を見せるようになり、驚くこともあるでしょう。
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