魚が獲れない日本「養殖でいい」は甘すぎるワケ 世界人口80億人、供給が追いつかない水産資源

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最後にこちらのグラフをご覧ください。極めて少ない資源増加のチャンスを確実にものにしている例です。ズワイガニは、もともと大西洋のノルウェーとロシアには生息していませんでした。しかしノルウェーとロシアの北部に位置するバレンツ海で、1996年に初めて資源が確認されました。ところがすぐに漁獲をせずに「15年以上」待って、ロシアでは2011年、ノルウェーでは2012年からようやく漁獲を開始したのです。

ズワイガニ漁獲量推移(出所)農水省・ノルウェー漁業省・ロシア連邦農業省データを基に筆者作成

日本では遠い昔から生息していたズワイガニ。それが10年もしないうちに、日本の漁獲量を大幅に上回っているのは驚くべき事実です。

ズワイガニには、成長すると大きくなり価値が高いオスと、成長しても大きくならないメスがありますが、ノルウェーとロシアではメスは漁獲しても海に戻して産卵させる一方で、日本ではオスでもメスでも関係なく水揚げしてしまいます。資源管理の違いと将来に影響している大きな結果の差異に気づいてほしいところです。

誤っていた日本の水産資源管理

2020年12月に70年ぶりに漁業法が大きく改正され、国は資源管理に舵を切ろうとしています。しかしながら「国際的に見て遜色がない資源管理の導入」は、まだなかなか進んでいません。上に挙げたニシンでは、漁獲可能量(TAC)が設定される予定にさえ入っていません。

TACの設定が進まない理由としては、漁業者の理解が得られないからと聞くことがあります。漁業者の理解が得られないのは、海外の資源管理の具体的な成功例に関する情報をもっていないことがよくあります。

世界の成功例には目を背け、資源量が減り続けていてもPDCAサイクルを回すこともなく、海水温上昇や外国に責任転嫁ばかりしている状況ではないのです。

「過ちて改めざる、これを過ちという」(孔子)という言葉があります。これまでの水産資源管理に関しては、残念ながら誤っていました。その結果、世界の中で日本だけ資源量が減り続け、漁獲量も減り続けています。その現実と改善方法を2022年8月から連載を始め、データを基に分析してきました。無謬性により、誤っていても改めず突き進む先にあるのは、さらなる水産資源の減少だけです。

80億人を超えて増え続ける人口増加と、それに伴う水産物の供給不足に対する対応は「待ったなし」です。科学的根拠に基づく資源管理をせずに、小さな魚や、資源が減っている魚を産卵期に獲っている余裕はありません。

記事を通じて一人でも多くの方に、魚をめぐる日本の危機とその対応策「科学的根拠に基づく資源管理」に気づいていただけるよう願っています。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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