魚が獲れない日本「養殖でいい」は甘すぎるワケ 世界人口80億人、供給が追いつかない水産資源

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水産物の供給がままならなくなっている状態で、限られたチャンスを逃し続けている余裕はないはずです。水産資源は環境や規制などの影響で一時的に増えることがあります。「卓越級群」と呼びますが、その資源を大切に保護しながら増やしていけば、将来の大きな財産になっていきます。

一方で、増えた分をすぐに獲ってしまえば、元の木阿弥です。以下で資源をサステナブルにするセーフティーネットの有無と、その明暗がはっきりしている残念な結果の例を挙げてみます。

北海道周辺のニシンの漁獲量(出所)水産研究・教育機構。写真は筆者提供

上のグラフはニシンの漁獲推移です。1980年代半ばに一時的に漁獲量が急激に増えていたことが読み取れます。もしも、この時に漁獲枠で数量規制をしていたら、規制で漁獲を逃れたニシンが産卵を続け、今よりもっとよい資源状態であったことに疑いの余地はありません。

マダラ太平洋北部系群 年齢別資源量推移(出所)水産研究・教育機構。写真は筆者提供

上のグラフは、マダラ(北部太平洋系群)の資源量推移です。東日本大震災で、放射性物質の問題で漁獲圧力が大幅に下がり、一時的に資源量が急激に増えました。しかしながら漁獲枠がなく、幼魚まで獲り続けた結果、資源量は震災前の状態に逆戻りです。実にもったいないことをしましたが、時計の針は元に戻りません。

ノルウェーでは、マダラに関しては科学的根拠に基づく漁獲可能量(TAC)が設定され、40cm以下の漁獲は禁止となっています。一方で、わが国では手のひら程度のマダラまで漁獲されてしまっています。スピードを上げて資源をサステナブルにする制度を作らないと間に合わなくなってしまいます。

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