日本の景気は思ったよりも良くなるかもしれない 家計に眠る「巨額の金」に加え、意外な追い風も

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ところがそれが2020年には11.0%、2021年には7.2%と急上昇した。コロナで皆が家に閉じこもるようになって、個人消費どころではなかったのである。つまりこの3年間は、人々が可処分所得を使い切れない日々が続いたということだ。

それでは2022年はどうだったかというと、1〜3月期は8.1%、4〜6月期は3.2%、7〜9月期は3.1%と、着実に「平常モード」に回帰しつつある(いずれも季節調整値)。念のために言っておくが、国民経済上の賃金に当たる「雇用者報酬」は、280兆円台でコロナの前後でほとんど変わっておらず、「可処分所得」も300兆円前後で同様である。ということは、家計部門には巨額の「使い残し」が発生していることになる。

これが日本銀行命名するところの「強制貯蓄」であり、50兆円程度あるのではないか、などと言われている。その半分でも消費に回ってくれれば、大いに日本経済を下支えしてくれるはずである。ゆえに2023年の景気は、あんまり心配することはない。むしろ今年のうちに「平常への回帰」を果たしてしまうと、2024年の上積みが難しくなりそうである。もっともそれは、いささか気が早い心配かもしれないが。

なぜ内閣府は1月に基調判断を下方修正したのか?

ところが内閣府は、1月の月例経済報告で基調判断を下方修正した。従来の「景気は、ゆるやかに持ち直している」という文言に、「このところ、一部に弱さがみられるものの」という表現を挿入したのである。基調判断の変更は、昨年7月の上方修正以来の動きとなる。果たしてどんな判断があったのだろう?

各論部分を見ると、1月に下方修正されたのは「輸出」「輸入」「倒産件数」などである。また「生産」は、昨年12月に下方修正になっている。どうやら昨年秋から中国での感染状況の悪化に伴い、対中輸出が伸び悩んでいることを反映しているらしい。

つまり現下の日本経済は、「脱・コロナ」を追い風にサービス分野が上向く一方で、モノをめぐる動きが停滞気味になっている。1月の月例経済報告の「先行き判断」には、「中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある」との文言が入っている。なるほど、昨年の日本の鉱工業生産指数は、中国本土の感染状況の変化を反映して激しいジグザグ型となった。日中の経済関係が、いかに深まっているかということである。

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