それらすべてを考え合わせると、コントロール感の増大が、身体的健康から心の平安、学業や仕事での成績向上、より満足度の高い人間関係に至るまで、あらゆる面において役立っているといえる。
逆に、コントロールを失っているという感覚は、チャッターを急増させ、物理的環境に目を向ける必要が生じるのだ。
真のコントロール感を持つためには、自らの意志で影響を及ぼすことができると信じるだけでなく、周囲の世界が秩序ある場所で、そこでは自分のあらゆる行為が意図どおりの成果を生むと信じなくてはいけない。世界に秩序が見えると安心できるのは、人生がより生きやすく、予測可能に感じられるからだ。
ある実験によれば、外界の秩序の必要性はひじょうに高いため、被験者がチャッターを喚起するような出来事を思い出し、コントロールの喪失感にとらわれると、彼らには錯覚によるパターンが見えたという。秩序をシミュレートする他の方法の代わりに、心がそのパターンを想像させたのだ。
別の実験では、周囲の雑音レベルをコントロールできない被験者たちが、黒い縁取りのあるスイレンの絵葉書と、同じ絵柄で縁取りのない絵葉書のどちらかを選ぶよう求められた。平均すると、彼らが好んだのは縁取りがあるほうで、この縁取りも秩序を示す視覚的表現である。
とはいえ、科学者たちが発見したのは、周囲を整えて物理的環境をコントロール可能な特定の構造に一致させれば、ナダルのように世界に秩序があるという感覚をシミュレートできるし、その延長線上で自分の心にも秩序を感じられるということだ。
誰でも簡単に実践できる不安の軽減法
ある領域(私たちの心)の混沌を埋め合わせるために別の領域(物理的環境)に秩序をつくり出す方法の魅力は、内なる声の原因となる特定の問題にまったく無関係でもいいという点にある。
そのおかげで、環境に秩序を与えるやり方はひじょうに便利で、ほとんどいつも容易にできる。そして、それを実践して得られるものは素晴らしい。
たとえば、ある実験では、世界を秩序ある場所として描く文章を読んだだけでも不安が軽減されることが示された。
あまり暮らしやすくない地域に暮らす人は気分がふさぐことがより多く、その一因は周囲の無秩序が目に入ることだと、ある研究が示唆しているが、それも当然に思える。
(翻訳:鬼澤忍)
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