かつてのリーダーは、知性、勇気、カリスマ性、決断力などを兼ね備えたスーパーエリートとして大事業を成し遂げる存在だった。だが、そのような伝説的な完全無欠のリーダーの時代は、もはや過去のものだ。
不正会計事件、サブプライムローン危機、原子力発電所事故、航空機の設計ミスによる悲惨な事故など、衝撃的な事件とその事後処理のまずさを見て来た人々は、もはやリーダーに対する信頼を失っているのである。
「ハーバード・ビジネス・レビュー」による2019年の調査では、従業員たちの58%が「上司よりも見知らぬ他人のほうが信用できる」と回答。さらに、45%が、自分の仕事ぶりに影響する唯一最大の要因に「リーダーシップへの信頼の欠如」を挙げているのだ。
一方、リーダーの側も同じ感覚を抱いており、CEOの55%は「信頼の危機は、組織の成長を脅かす要因のひとつ」と答えている。
信頼の欠如は、従業員の生産性に影響を及ぼすだけでなく、トラブル処理に奔走する時間を増やし、転職の可能性も高めてしまうのだから無理はない。
18~20歳の若者たちへの調査では、「もっとも信用できない人々」という点において、「ビジネスリーダー」と「政治家」が肩を並べてもいる。
信頼感は成果に直結する
だが、リーダーと言えば、無条件にすべてが信頼を失っているというわけではない。厚い信頼を維持できている組織もあり、現実に成功しているからだ。
2016年の「HOW報告書」によれば、リーダーに対する信頼が厚い組織で働く従業員たちは、会社にとって有益と思われる場合にリスクを取る確率が32倍高く、高度のイノベーションを生み出す可能性が11倍高く、同業他社の従業員たちよりも優れた業績をあげる確率が6倍高いという。
では、リーダーたちは、どうすれば信頼を得ることができるのか?
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