「卵が高くなった」と驚く人が知らない最新事情 物価の優等生に異変、食の調達めぐる厳しい現実

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そこにウクライナ戦争が起き、争奪戦が激化した。ウクライナは世界のトウモロコシ輸出の10%強を占めていた。食料生産地帯を被害地とする戦争は市場を高騰させた。さらにウクライナが戦地になったことで作付面積が減少している。ロシア側の妨害工作により輸出にも悪影響が及んでいるとされる。世界の最大の収穫地が衝撃を受けているのだ。

当然ながら日本も影響を受ける。いまだにウクライナ戦争の終結も見通せていない。日本では備蓄している品目があり、コメ、食糧用小麦、とうもろこし等の飼料穀物となっている。まだ市況の影響は軽減できているといえるが、それでも完全に払拭できるわけではない。なお飼料で麦も同様に高騰している。

アメリカではEggflationなる単語も出てきた、これはインフレーションをもじった言葉で、卵高騰とでも訳せばいいだろうか。アメリカにおける卵価格の高騰はアメリカのインフレ率をも超えている。日本でいうワンパックが5ドルから8ドルを超え、物価上昇が当たり前のアメリカでも消費者を揺さぶっている。

アメリカでも卵の価格が上がっている理由は日本と同じで、鳥インフルエンザによって大量の鶏が殺処分されたことと、飼料の高騰が要因だ。卵はそれでも安価に動物性タンパク質が摂取できる食品のため需要は多いが、供給は絞られてしまった格好だ。

私たちができること

正直に言えば、私たちができることは少ない。購入した卵を廃棄することなく、しっかりと使い切ることはまず必要だろう。また、先にあげたように食品製造においては卵の代替を考えたり、使用効率向上を図ったりする必要がある。

消費者としては、すこしでも安価な店を選択することしかない。ただし、飼料を世界の国に買い負ければ、そもそも卵の生産もおぼつかない。

諸外国に買い負けるとは、単純にいえば他国が価値を感じるものを、日本は価値を感じずに対価を支払えないことだ。食うに困っている貧困世帯が少なくないことは十分に理解している。そうした人たちを社会的に支えながらも、これから緊急時はしかるべき対価を支払っても購入するという姿勢が消費者サイドにもなければ、そもそも飼料が手に入らなくなるかもしれない。

卵の高騰は、単に卵そのものの値上がりだけではなく、いよいよ食の調達環境が変わったのだという課題を日本人に投げかけている。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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