「正職員に嫌われたら終わり」非正規公務員の苦悩 「2023年問題」自治体7割強で雇い止めの可能性

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上林教授によると、自治体が公募を実施するのは、すべての市民に採用のチャンスを与え「公平性」を保つことが目的だ。試験の成績に基づいて人材を採用する「メリットシステム」を導入することで、情実的な入職を防ぐ狙いもある。

上林教授の調査では72の自治体が、前任者は公募に応募できないという制限すら設けており、「あまりにも行き過ぎた制限であり、早急に改める必要がある」と批判する。既存職員が積み上げてきた経験や知識が、公募のたびに丸ごと職場から失われ、行政サービスの質が低下するというデメリットも招きかねない。

一方で、460の自治体は公募を実施していない。こうした自治体は理由について「勤務を通じて能力を実証できる職員を継続任用する」などと回答しており、公募でなくとも能力評価は可能だとの判断がうかがえる。

上林教授も「人事評価で職務に見合う能力があると判断した職員については、公募せずに契約を更新するべきだ」と訴える。

「一律に公募を実施すると、付け届けのような不快な習慣がまかり通り、正職員のハラスメントに泣き寝入りせざるを得ない環境が温存され、職場の雰囲気も悪くなってしまいます」

「ジョブ型」へのシフトで優秀な人を集める

任用職員を巡っては早ければ2024年度から、従来の期末手当に勤勉手当を上乗せし、ボーナスを引き上げるとの政府方針が報じられている。しかし上林教授は、手当のような小手先の処遇改善ではなく、正規・非正規に分かれた公務員の枠組みそのものに、メスを入れる必要があると強調した。

「公務員は今や、正職員すら人気が低下しつつあります。各ポストに必要な能力を持つ人を無期雇用し、仕事に見合う賃金を支払う『ジョブ型』へのシフトを進めることで、非正規の処遇改善だけでなく、専門的なスキルを身につけたい若者を集めることもできるはずです」

有馬 知子 フリージャーナリスト

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ありま ともこ / Tomoko Arima

共同通信社を経て2018年独立。取材テーマはひきこもり、児童虐待、性暴力被害や多様な働き方など。

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