「正職員に嫌われたら終わり」非正規公務員の苦悩 「2023年問題」自治体7割強で雇い止めの可能性
非正規公務員は2020年4月現在、約70万人に上る。女性が7割を占め、図書館司書などの専門職のほか、虐待・DV被害者や生活困窮者の支援職などセーフティネットを支えるエッセンシャルワーカーも多い。またこのうち約62万人が、地方自治体の「会計年度任用職員」だ。
会計年度任用職員制度は、各自治体でまちまちだった非正規公務員の呼称を「会計年度任用職員」にそろえ、手当などの処遇も統一するため、2020年4月に導入された。
これによってフルタイムの任用職員と正職員との処遇格差は縮小したが、パートの任用職員については、むしろ支払われる手当が限定されてしまった。フルタイムの就業時間を15分減らしてパート扱いにする自治体も相次ぎ、任用職員の9割弱がパートで働いている。
2023年3月、自治体の7割強が「公募」実施へ
また非正規公務員女性らでつくる「はむねっと」が2022年、非正規公務員704人に対して実施したアンケート調査では、回答者の約4割が年収150万円未満、約8割が250万円未満だった。
さらに自治体の多くは、任用職員の雇用期間が1年、3年、5年など一定の年限に達すると契約を更新せず、公募を実施している。それまで任用職員として働いていた人が勤務の継続を望む場合も、他の応募者と同じように採用試験を受けなければならない。
非正規公務員の問題に詳しい、立教大学コミュニティ福祉学部の上林陽治特任教授の調査によると、2020年4月時点で、毎年公募を実施するとした自治体は1254と全体の38.2%、3~5年で実施するとした自治体もほぼ同数に上った。このため上林教授は、制度導入から丸3年を迎える2023年3月には「『毎年』と『3年』を合わせておおむね7割の自治体が、公募を実施するのではないか」と予測する。
採用試験の結果、再度同じ職を得る人も相当数にのぼる見通しだが、美幸さんの職場のように、恣意的な雇い止めが行われるリスクも高まる。このため公募の時期を迎えた任用職員の多くが「4月以降、この職場にいられるだろうか……」という不安を抱いているのだ。
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