「どうする家康」松本潤と脚本家の絶妙すぎる相性 ジャニーズの「王道」を歩んできた道のり

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ジャニーズ事務所所属のタレントが大河ドラマの主演を務めるのは、東山紀之、香取慎吾、滝沢秀明、岡田准一と来て、松本潤で5人目になる。

ジャニーズ初の大河ドラマ主演は、東山紀之だった。いまからちょうど30年前の1993年に放送された『琉球の風』である。琉球王国を描いたこの作品は、初めて沖縄が舞台になった大河ドラマである。しかも東山紀之が演じた主人公は、大河ドラマとしては珍しく実在する歴史上の人物ではなく架空の人物だった。

また香取慎吾が主演したのは、『新選組!』(2004年放送)。新選組という存在は幕末ものの大河ドラマには不可欠だが、香取慎吾が演じた局長の近藤勇は、従来なら重鎮的なベテラン俳優が演じることが多かった。だが当時香取はまだ20代後半の若さ。

脚本の三谷幸喜は、近藤を中心とした新選組隊員の青春群像劇としてこの作品を描いた。その面では、香取慎吾のアイドルとしての魅力を前提にした物語になっていた。

演じる側のプレッシャーも大きい

このように、『どうなる家康』と同じく、ジャニーズが主役を演じる大河には得てしてチャレンジ精神に富んだものが多い。しかも今回は、主人公が徳川家康という大河ドラマのなかでもきわめてメジャーな存在だ。その意味ではチャレンジの度合も大きく、より演じる側のプレッシャーも大きいと想像できる。

しかしだからこそ、ジャニーズのエンターテインメントの土台にある「なんでもあり」の精神は、ここで底力を発揮しうるのではあるまいか。

ジャニーズのステージの根底にあるのは、観客を楽しませるためであればジャンルにこだわらずなんでも取り込もうという柔軟な積極性だ。そして松本潤は、演者であるだけでなく嵐をはじめとしたジャニーズのライブ演出を手がけていることでも有名であり、その点ジャニーズのエンターテインメントをトータルに知る数少ないひとりと言うことができる。

したがって、大河ドラマに新たな可能性を切り拓こうという今回の大きなチャレンジに際し、主役として松本潤を起用することは理にかなったことだと思う。いまはまず、“松本潤=徳川家康”によるこの冒険の行末を楽しみに見守りたい。

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太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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