コンゴ出身の「30歳難民男性」が日本で得た活路 高学歴・高スキルの難民は企業を救う存在に

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「日本企業のルールやビジネスでの日本語にまだ慣れなくて、不安はつねにあります。でも、上司のマネジャーがとても気さくな方で、相談しやすい環境をつくってくれるので助かっています」と、ノデさんは笑顔を見せる。

インドの大学で国際経営学を学び、コンゴ民主共和国の非政府機関で働いていたというノデさんは、母国ではかなりの「エリート層」だ。公用語であるフランス語のほかベルギー語、英語も操る。日本語も日本語能力試験3級をめざして特訓中だ。

ノデさんの母国・コンゴ民主共和国では、歴史的な部族対立やレアメタルなど鉱物資源をめぐる武装勢力の対立など、今もなお不安定な情勢が続いている。ノデさんも非政府機関の職員という立場上、次第に命の危険を感じるようになり、周囲の勧めもあって国外に亡命することを決意した。

フランス語を公用語とするカナダは、大使館が政情不安を理由に国外に退去してしまい、手続きにかなりの時間を要することが判明。「人種差別による迫害リスクの少ない国」という理由で日本を選択した。ノデさんのように、迫害や戦争から逃れようとする難民にとって、国を自由に選べる時間的・精神的余裕はないのだ。

命の危険を感じ、縁もゆかりもない日本に亡命

縁もゆかりもなく、もちろん日本語もまったく話せないまま、極東の異国の地に降り立ったノデさん。知人のつてを頼り、埼玉県内の食品工場で2年半働いたが、コロナ禍のあおりでシフトを減らされてしまい、その後は東京郊外のマクドナルドに移って細々と生計を立てていた。

そんなある日、NPO法人難民支援協会(JAR)から「日本企業の面接を受けてみないか」という話が舞い込んだ。

きっかけをつくったのは、海運大手の商船三井。外国人船員の育成ノウハウを生かし、外国人を対象とした人材紹介・コンサルティング事業を展開している同社が、JARに「日本企業で活躍できる難民人材はいないか」と打診。そこで白羽の矢が立ったのがノデさんだったのだ。

「日本にいる難民の多くが実は高度な学歴やスキルを持っていることを聞き、人材難に悩む日本企業にとっても優秀な人材を確保するチャネルになりうるのでは、と思いました」と、同社のフェリー・関連事業部 外国人人材事業チームを率いる小池秋乃氏は話す。その小池氏は、ノデさんを同じ商船三井グループの商船三井ロジスティクスに紹介してみた。

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