コンゴ出身の「30歳難民男性」が日本で得た活路 高学歴・高スキルの難民は企業を救う存在に

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加えて、商船三井ロジスティクスの福永氏が「人道支援では採用するつもりはなかった」と語ったように、難民人材の雇用は人道支援が「目的」ではないが、「結果」として人道支援になる。就労に関する在留資格の取得によって、経済的にも精神的にも安心して日本で暮らすことができる。何より、一度は断念せざるをえなかった自身のキャリアを、この日本でもう一度リスタートできることは本人にとって何よりの希望だろう。

課題は「採用」より「定着化」

一方で、難民人材の活用にはもちろん課題もある。可部氏は「難民雇用は入り口の採用より、その後の定着化のほうが難しい」と指摘する。

同氏によると、難民を含む外国人人材に共通する課題は2つある。

1つは、外国人人材に対して日本企業ならではの慣習や職業観をそのまま当てはめてしまうこと。職場での規則から、細かいところでは「上座・下座」などのマナーにいたるまで、日本人なら当たり前にできることを外国人にも十分な説明もなく強いてしまう。「仕事とは教えてもらうものではなく盗むものだ」との“昭和”な組織風土も阻害要因となる。

2つ目は、経営層の意識や考えが現場まで浸透していないこと。いくら経営層が組織変革のために難民人材を採用しても、配属先の現場ではその意図を十分に理解せず「1から教えないといけない」「日本語が通じずコミュニケーションが面倒」との理由から、教育を十分に施さないケースが少なくない。結果、外国人人材が孤立を深め、失意のうちに離れていってしまうのだ。

商船三井ロジスティクスでは、国際物流という業務上英語が必須なので、お互いに第2言語の英語でコミュニケーションを図っている。また、ノデさん自身も「上司のマネジャーが相談しやすい環境をつくってくれる」と語ったように、現場がノデさんに対してきめ細かい配慮をしている。目下、20代の若手社員と30代のベテラン社員の2人がメンター役となってOJTで業務経験を積ませている。

さらに、難民人材固有の課題として挙げられるのが、「難民」に対するネガティブなイメージだ。

「受け入れる側が『難民=かわいそうな存在』と誤解して、いつまでも腫れ物に触るような扱いをしているケースが少なくありません。また、難民の側もそういう目を向けられることに不満を抱いています」(可部氏)

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