「川崎」ほど今の日本を体現している町はない ヒップホップが希望の光となっている

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中1殺害事件、日進町の簡易宿泊所火災、老人ホーム連続転落死など世間を揺るがす事件が続いた川崎が映し出す日本の問題点とは?(撮影:梅谷秀司)
東京と横浜の間、人口150万人都市・川崎。郊外住宅地やタワーマンション開発で話題の市北西部からJR川崎駅をまたいだ南側は容貌が一変。ディストピアとも表される川崎区が広がる。『ルポ 川崎』を書いた音楽ライターの磯部涼氏に現在の川崎について聞いた。

川崎に凝縮された闇と、そこに灯った光

――川崎は独特な街なのですか?

川崎、中でも川崎区という土地を描くことで、日本の問題点が浮かび上がる。華やかなショッピングモールの横に関東有数の性風俗街・堀之内、日雇い労働者や高齢者の簡易宿泊所が並ぶ日進町、在日外国人のコミュニティ・桜本があり、工場労働者たちのバラック群がルーツの池上町、その背後に京浜工業地帯が広がっている。狭い1つの区の中に実に多様な顔が凝縮された街です。

戦時中は日本の軍需産業を、戦後は経済復興を支え、同時に公害問題に苦しんだ京浜工業地帯。そこに朝鮮半島、最近は東南アジアや南米から工場労働者がやってきてコミュニティを形成した。日本の近代の歩みをそのまま映している。

――川崎市では2015年に中1殺害事件、日進町の簡易宿泊所火災、老人ホーム連続転落死など世間を揺るがす事件が続きました。

事件そのものの陰惨さもそうですけど、中1殺害事件では主犯格の少年がフィリピンにルーツを持っていたことで、排外主義へ結び付き、区内でヘイト・デモが湧き起こった。日進町の火災事件では、日本の発展を支えた高齢の労働者が、簡易宿泊所にすがるしかない現実が浮き彫りになりました。

その一方で川崎から今、ヒップホップのラッパーがどんどん出ていて、若者たちにすごく支持されている。陰惨な事件であらわになったのが日本の闇だとしたら、ラッパーたちは、その状況を変えたい、そこから抜け出そうとか、年下の子たちには進むべき道を教えたいと音楽で訴えている。彼らの存在は闇の中に灯った光です。

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