「川崎」ほど今の日本を体現している町はない ヒップホップが希望の光となっている

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――BAD HOPというラップグループが1つの光になっている。

工場地帯に程近い迷路状の街、池上町出身の彼らが案内人になってくれた。みんな明るくて、本当にイイ子たちっていうか、昔はワルで逮捕されてたなんてわからない感じ。タトゥーは顔にまでビッシリ入ってますけど(笑)。取材中、彼らは敬語を崩さない。曰(いわ)く、一種の防御だと。相手が明らかに年下の場合でもその素性はわからない、ヤクザ系かもしれないから、まず敬語を崩さずに警戒する癖がついてしまったと言ってました。

磯部涼(いそべ りょう)/1978年生まれ。和光大学人文学部中退。高校時代に音楽ライターとして仕事を始め、現在に至る。主にマイナー音楽やそれらと社会のかかわりについて執筆。著書に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』『音楽が終わって、人生が始まる』など。(撮影:尾形文繁)

川崎区で育った若者たちって、本当に川崎区から出ない。中卒で地元で職人とか工事関係の仕事をして、10代終わりで子どもができ家庭を持ってという、区内で人生が完結していく子が本当に多いんです。そんな中で、特に中高生の間でBAD HOPはあこがれの存在。不良の子どもは職人になるかヤクザになるかしかなかったところに、ラッパーになるという第3の道が開けた。彼らの過酷な生い立ちにリアリティを感じ、彼らにあこがれてラップをする子たちがいっぱいいる。

BAD HOP自身、小学2年から勉強してないとか、居酒屋の割り勘で割り算を覚えたみたいな子たち。携帯で調べながらラップの詞を書いてるうちに、これまでの人生とか、今自分が置かれている状況、川崎という街の現実に向き合っていった。このままヤクザが本職になるんだなと思ってたときに、違う道があるのかもしれない、と客観視するようになった。

狭い街の中は子どもたちの関係が濃い

――例の川崎中1殺害事件については、地元の若者たちは違った受け止め方をしていたようですね。

「やることといえば公園にたまるぐらい。退屈だから事件をイベントみたいに考えてたヤツも多い」と聞いた。狭い地域特有の子どものつながりで起こった“伝統的な事件”という声もありました。

川崎区という狭い街の中は子どもたちの関係が濃いというか、不良のピラミッドの上下関係が強固に根付いているんです。大きな暴力団が地元を仕切っていて、何かあれば飛んでくるみたいな。ヤクザを頂点にチンピラがいて不良少年がいて、中学生から数十万円という上納金を徴収する。ただ、そのピラミッドからはみ出ると当たりが強い。事件の少年たちはそこに入れない落ちこぼれで、自分たちの中で小さなピラミッドを作り、こじれていった。

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