コンゴ出身の「30歳難民男性」が日本で得た活路 高学歴・高スキルの難民は企業を救う存在に

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国際物流はコロナ後も活況を呈しており、人手はつねに足りない状況。加えてグローバルに拠点を持つ同社にとっても、外国人人材はもともと積極的に採用する方針だった。それでも「採用はあくまで人物本位。難民だからといって人道支援で採用するつもりはありませんでした」と同社の執行役員人事総務部長の福永由美氏は話す。

福永氏がノデさんと対面した第一印象は「スーツをビシッと着こなした好青年」。語学力に加え、彼がアフリカ、インドの双方にバックボーンを持っている点にも強い関心を持った。

「インドは当社が注力している拠点の1つであり、アフリカも今後の発展が非常に見込まれる市場。インドとアフリカを結ぶ貿易も盛んです。その点でも、ノデさんのバックボーンと人脈、語学力は大きな武器になると感じました」

こうして、来日から4年が経った2022年4月、晴れてノデさんは日本企業に契約社員として採用された。「当面の目標は正社員登用。将来は海外の営業戦略を担ってほしい」と福永氏は大きな期待を寄せる。

商船三井ロジスティクス株式会社の福永由美氏(左)とノデさんのマネージャーの小久保真男氏(写真:筆者撮影)

難民人材は組織に変革を起こす“触媒”

難民雇用というと、これまでは十分な就労機会が与えられず、雇用契約も社会保険もない工場勤務などの「3K労働」を強いられているケースが多かった。ところが、この商船三井ロジスティクスのケースのように、近年では難民を高度人材として評価し、正社員、あるいはそれに準じた形で採用する日本企業は徐々にだが増えている。

「ここ10年の動きとして、新たな市場の開拓や新規事業の創出など、今後の挑戦に向けて企業に変化をもたらす存在として、難民人材に注目が集まっています」明治学院大学教養教育センター付属研究所研究員で、国際協力機構(JICA)でシリア難民の人材育成プログラムなどにも携わる可部州彦氏はそう語る。

一例を挙げると、都内のある鋳造メーカーでは、生き残りのため「脱・下請け」を掲げ、海外も含めた販路拡大を決意。難民も含めた外国人人材を積極採用した。それを機に、日本人社員の英語能力向上のためオンライン英会話レッスンを導入するなどグローバル化に向け組織改革を推進。2011年には海外からの受注売り上げはゼロだったが、2年後には全体の70%を海外受注が占めるまでになった。

このように、難民人材は旧態依然とした組織に「ゆらぎ」をもたらし、変革を起こす“触媒”になりうるのだ。

「近年では、上場企業に人的資本の開示が義務づけられているように、企業経営においてどのような人材を確保し、育成しているかの姿勢が社会から問われています。ESG経営やダイバーシティといった文脈でも、難民人材を雇用することには大きな意義があります」(可部氏)

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